不動産営業のクレームは成長の宝庫?元営業が語る、クレーム対応で身につく7つの最強スキル

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「不動産営業って、お客様からの厳しいクレームが多そうで、なんだか怖いな…」。高額な商品を扱うだけに、もし何かミスをしてしまったら、どうなってしまうんだろう。そんな風に、クレールの対応に不安を感じて、一歩を踏み出せないでいる方もいらっしゃるかもしれませんね。

こんにちは。私は以前、大手不動産会社で営業として働き、現在は広報としてたくさんの営業の現場を取材しています。そんな私の経験から申し上げますと、残念ながら、不動産営業とクレームは、切っても切れない関係にある、というのは事実なんです。

でも、もしそのクレーム対応が、あなたをビジネスパーソンとして大きく成長させてくれる、最高の機会だとしたら、どうでしょうか。この記事では、なぜクレームが起こるのかという実態から、その大変な経験を通じてどんな素晴らしいスキルが身につくのか、そしてクレームを乗り越えてお客様との信頼を深めるための秘訣まで、丁寧にお話ししていきたいと思います。

この記事でお伝えしたいこと

  • なぜ不動産営業にクレームはつきものなのか、その3つの理由
  • クレーム対応を通じてこそ身につく、一生モノの最強スキル7選
  • 炎上させない!誠実さが伝わるクレーム対応の基本5ステップ
  • クレームを「ありがとう」に変える、上級者になるための心構え
  • クレームに強い会社を見分けるための、会社選びのポイント

なぜ不動産営業はクレームと隣り合わせなの?3つの根本理由

まずはじめに、どうして不動産営業にはクレームがつきものだ、と言われてしまうのでしょうか。その理由をきちんと理解しておくと、クレームを過度に恐れるのではなく、冷静に向き合うことができるようになります。私が思うに、その理由は大きく3つあるんです。

理由1:扱う金額が大きく、お客様の「期待値」が非常に高いから

これが、最も大きな理由です。不動産は、多くのお客様にとって「人生で一番高い買い物」になります。数千万円、時には億を超えるお金が動くわけですから、お客様が慎重になるのは当然のことですよね。

「絶対に失敗したくない」「最高の選択をしたい」という強い想いがあるからこそ、物件や営業担当者に対する期待値も、非常に高くなります。その高い期待と、現実の間に少しでもギャップが生まれてしまうと、それが不満やクレームという形で表れることがあるんです。

例えば、「日当たり良好と聞いていたのに、午後は隣のビルの影になって暗い」といったことは、営業担当者にとっては数ある物件の一つでも、お客様にとっては、これからの人生を過ごす大切な我が家のこと。この想いの重さの違いを理解することが、まず第一歩になります。

理由2:法律や専門知識が絡む、取引の「複雑性」

不動産の取引は、単にモノを売り買いするのとはわけが違います。そこには、宅地建物取引業法や民法、建築基準法といった、たくさんの難しい法律が複雑に絡み合っています。

私たちプロは、契約書や重要事項説明書に書かれている内容を正しく理解し、お客様に分かりやすく説明する義務があります。ですが、もしこの説明が不十分だったり、専門用語を並べただけでお客様が理解できていなかったりすると、後から「そんな話は聞いていない!」というトラブルに発展してしまうんです。

特に、物件の瑕疵(かし)、つまり目に見えない欠陥(例えば、雨漏りやシロアリ被害など)に関する説明不足は、最も大きなクレームにつながりやすいポイントです。プロとしての責任が、非常に重く問われる部分なんですね。

理由3:物件という「一点物」の特性と、人の「感情」

不動産は、工業製品のように、すべてが同じ品質というわけではありません。一つひとつ、立地も、間取りも、築年数も、そして前の所有者の使い方も違います。まさに「一点物」です。

そのため、住んでみて初めて分かるような、予測しきれない問題が起こることもあります。「上の階の足音が思ったより響く」「隣人との関係がうまくいかない」といった、人の感情が絡む問題も、残念ながら発生します。

こうした問題は、必ずしも営業担当者の責任とは言えないかもしれません。でも、お客様にとっての窓口は、その物件を紹介してくれた営業担当者です。だからこそ、そのやるせない気持ちの矛先が、私たちに向けられることがある。この構造を理解しておくことも、とても大切なんです。

【実際にあったクレーム事例】
私が取材した中で、若手の営業さんが経験したこんな事例がありました。「中古マンションの売買で、引き渡し後に買主様から『給湯器が壊れてお湯が出ない!どうしてくれるんだ!』と激しいクレームの電話が入ったそうです。契約前の設備チェックでは正常に作動していたのですが…。」こうした予期せぬトラブルも、不動産取引の難しさの一つです。


クレーム対応でこそ磨かれる!不動産営業で身につく7つの最強スキル

クレームが多い理由を知って、ますます不安になってしまったかもしれません。でも、ここからがこの記事で一番お伝えしたいことなんです。大変なクレーム対応の経験は、実はあなたを他の誰よりも成長させてくれる、最高のビジネススキル養成ギプスになるんですよ。ここで身につけた力は、不動産業界だけでなく、どんな仕事でも通用する一生モノの財産になります。

スキル1:究極の「傾聴力」と冷静な「状況把握能力」

お客様がクレームを伝えてくるとき、その多くは感情的になっています。怒りや不安、失望といった気持ちが渦巻いているんですね。その中で、まず求められるのが、相手の言葉を遮らず、ただひたすらに耳を傾ける「傾聴力」です。

「そうだったのですね」「ご不便をおかけしました」と相槌を打ちながら、お客様が何に怒り、何を求めているのか、その感情の背景にある事実を冷静に聞き分ける。この訓練を繰り返すことで、感情と事実を切り分け、パニックにならずに状況を正確に把握する力が、驚くほど身につきます。これは、あらゆるビジネス交渉の基本となる、非常に重要なスキルです。

スキル2:核心をつく「問題解決能力」

お客様の話をじっくり聞いた後、次に行うのは「では、どうすればこの問題は解決するのか?」を考えることです。クレーム対応は、ただ謝るだけでは終わりません。

「お客様が本当に望んでいることは何か?」「私たちにできることは何か?」「法的に、契約上、どう対応するのが正しいのか?」といった複数の視点から、問題の根本原因を見つけ出し、最も現実的で、お客様にも納得していただける解決策を導き出す。このプロセスは、まさにコンサルティングそのものです。この問題解決能力は、どんな仕事でもリーダーシップを発揮するために不可欠な力になります。

スキル3:どんな相手にも伝わる「交渉・調整能力」

クレーム対応は、多くの場合、自分とお客様だけで完結しません。売主様、管理会社、リフォーム業者、時には弁護士など、たくさんの関係者が登場します。

それぞれの立場や言い分がある中で、板挟みになりながらも、全員が納得できる着地点を探っていく。この経験を通じて、利害が対立する相手との間で、粘り強く落としどころを見つける高度な交渉・調整能力が磨かれます。これは、社内の部署間調整から、大きな商談まで、あらゆる場面で活かせる強力な武器になりますよ。

スキル4:動じない「精神的な強さ(ストレス耐性)」

正直にお話しすると、お客様から厳しい言葉を投げかけられるのは、やはり辛いものです。理不尽だと感じてしまうこともあるかもしれません。しかし、こうした厳しい経験を乗り越えるたびに、あなたの心は少しずつ強くなっていきます。

クレームを自分個人への攻撃と捉えず、「お客様が困っているサイン」として客観的に受け止める。感情的にならず、プロとしてやるべきことに集中する。こうした訓練を積むことで、少々のことでは動じない、しなやかで強いメンタル、いわゆるストレス耐性が身につきます。この精神的なタフさは、長い社会人人生を送る上で、あなたを守ってくれる大きな力になります。

スキル5:誠実さを伝える「高度なコミュニケーション能力」

クレーム対応で最も大切なのは、「誠実に対応しよう」という気持ちが、相手にきちんと伝わることです。言葉遣い一つ、メールの文面一つで、相手の受け取り方は全く変わってしまいます。

丁寧な言葉遣いはもちろんのこと、相手の感情に寄り添う共感の言葉、分かりやすい説明、そして今後の見通しを伝える安心感のある言葉。これらを、状況に応じて使い分ける。この経験は、あなたのコミュニケーション能力を飛躍的に向上させます。これは、お客様だけでなく、社内の人間関係を円滑にする上でも、非常に役立つスキルです。

スキル6:法律や契約を読み解く「リスク管理能力」

クレームが発生した時、必ず立ち返るべきなのが「契約書」です。契約書には、トラブルが起きた時にどう解決するか、というルールが書かれています。この契約内容を正しく理解し、法律と照らし合わせながら、対応の筋道を立てていく。

このプロセスを通じて、契約書に潜むリスクを事前に察知したり、トラブルを未然に防ぐための提案をしたりする「リスク管理能力」が自然と身についていきます。物事を常に「もしも」の視点から見られるようになることは、ビジネスパーソンとして非常に価値のある能力です。

スキル7:お客様の真のニーズを引き出す「深掘り力」

実は、クレームは「お客様の本当のニーズ」が隠された宝の山でもあるんです。お客様が口にしている不満は、表面的なことに過ぎない場合があります。

「なぜ、お客様はこの点にこれほどこだわるのだろう?」「この不満の裏には、どんな暮らしへの期待があったのだろう?」と、一歩踏み込んで考える。この「深掘り力」は、クレームを解決するだけでなく、次のお客様への提案の質を劇的に高めることにつながります。クレームから学んだ営業は、お客様の心の奥底にある、言葉にならない願望まで汲み取れるようになるんです。


もう怖くない!誠実さが伝わるクレーム対応の基本5ステップ

身につくスキルが分かっても、いざその場になったらパニックになってしまいそう…と感じるかもしれませんね。大丈夫です。クレーム対応には、誠実な気持ちを相手に伝え、事態を悪化させないための「型」のようなものがあります。この基本ステップを覚えておくだけで、冷静に対応できるようになりますよ。

Step1:まずは真摯に「謝罪」と「傾聴」

何よりも先にやるべきことは、お客様に不快な思いをさせてしまったこと、ご不便をおかけしたことに対して、まず真摯に謝罪することです。ここで大切なのは、非を認めるかどうかではなく、「お客様の気持ち」に対して謝ること。「この度は、ご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません」という一言が、お客様の興奮を鎮める第一歩になります。

そして、先ほどもお話しした「傾聴」です。相手の言葉を一切遮らず、まずはすべての言い分を吐き出してもらいましょう。これが、信頼回復へのスタートラインです。

Step2:事実関係の「確認」と「整理」

お客様の話を伺ったら、次は「いつ、どこで、何が、どのように起こったのか」という事実関係を、感情と切り離して客観的に確認します。ここで、安易に「すべてこちらでやります」と約束してはいけません。

「〇〇という状況で、〇〇という問題が起きている、という認識でよろしいでしょうか?」と、お客様と認識をすり合わせます。そして、「この件については、一度社に持ち帰り、契約内容と状況を至急確認させてください」と伝え、正確な情報を集める時間をもらうことが重要です。

Step3:解決策の「提案」と「選択肢の提示」

事実確認ができたら、いよいよ解決策の提案です。ここで大切なのは、一つの案を押し付けるのではなく、複数の選択肢を提示することです。

例えば、「A案は費用はかかりますが、最も早く解決できます。B案は少しお時間がかかりますが、費用を抑えられます。いかがいたしましょうか?」というように、メリットとデメリットを明確に伝え、お客様自身に選んでいただく。このプロセスが、お客様の納得感を高めることにつながります。

Step4:迅速な「実行」と「こまめな進捗報告」

対応策が決まったら、約束したことを迅速に実行に移します。そして、それと同じくらい大切なのが、「今、どういう状況か」をこまめに報告することです。お客様が一番不安なのは、「放置されている」と感じることだからです。

「本日、業者に手配をかけました。明日の午前中に、担当者からご連絡が入る予定です」といった具体的な報告が、お客様に安心感を与え、信頼を少しずつ取り戻していくことにつながるんです。

Step5:再発防止策の「共有」と「感謝」

問題がすべて解決したら、それで終わりではありません。最後に、「今回の件を教訓に、社内では今後このようなことがないよう、〇〇という対策を徹底いたします」と、再発防止策を伝えることで、会社の誠実な姿勢を示すことができます。

そして、忘れてはならないのが、「この度は、私どもの至らない点をご指摘いただき、誠にありがとうございました」という感謝の言葉です。クレームは、会社の弱点を教えてくれる貴重な機会。その機会を与えてくれたことへの感謝を伝えることで、お客様との関係が、雨降って地固まる、より強固なものになることさえあるんですよ。

まとめ:不動産営業のクレーム対応が、あなたを成長させる最強スキルになる理由

不動産営業とクレームは、残念ながら切っても切れない関係です。でも、その大変な経験が、あなたをどう成長させてくれるのか、お分かりいただけたでしょうか。最後に、この記事のポイントをまとめますね。

  • 不動産営業にクレームがつきものなのは、扱う金額の大きさ、取引の複雑さ、そして人の感情が絡むという、仕事の特性が理由です。
  • 大変なクレーム対応の経験は、「傾聴力」「問題解決能力」「交渉力」「精神的タフさ」など、どんな仕事でも通用する7つの最強スキルをあなたにもたらしてくれます。
  • クレーム対応には基本の型があります。「謝罪と傾聴」から始まり、「事実確認」「解決策の提案」「迅速な実行と報告」「再発防止と感謝」という5つのステップを踏むことで、誠実に対応することができます。
  • クレームは、ただの厄介事ではありません。お客様の真のニーズを知り、会社の弱点を改善できる「成長の機会」と捉えることができれば、それはあなたにとって最高の学びの場になります。

クレーム対応は、決して楽な仕事ではありません。でも、そこから逃げずに誠実に向き合った経験は、必ずあなたの血となり肉となります。そして、困難を乗り越えてお客様からいただいた「ありがとう」の一言は、他のどんな成功体験よりも、あなたの心に深く、温かく残るはずです。

この記事が、あなたのクレームに対する見方を変え、不動産営業という仕事の奥深さを知るきっかけになれたなら、これほど嬉しいことはありません。