こんにちは。「自分の頑張りが、もっと正当に評価される仕事をしてみたい」。そんな風に考えたことはありませんか?年齢や社歴ではなく、自分の成果で収入が決まる世界に、魅力を感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。
不動産業界でよく耳にする「インセンティブ」という言葉は、まさにその成果主義を象徴する制度です。でも、言葉は知っていても、その具体的な仕組みや、本当に稼げるのかというリアルな実態は、なかなかわかりにくいものですよね。
「歩合給って不安定じゃないの?」「どんな計算で貰えるの?」そんな疑問が浮かぶのも、とても自然なことだと思います。
この記事では、私が広報として350人以上の不動産のプロに取材してきた経験から、不動産営業の「インセンティブ制度」について、その基本から具体的な計算方法、会社選びのポイントまで、5つの疑問に答える形でお話ししていきますね。あなたのキャリアを考える上で、きっと新しい視点が見つかるはずです。
この記事でお伝えしたいこと
- 不動産営業におけるインセンティブ制度の基本的な仕組み
- インセンティブ(歩合給)の具体的な計算方法とシミュレーション
- 高額なインセンティブを得ている営業パーソンの特徴
- インセンティブ制度で会社を選ぶ際に注意すべきポイント
- 「フルコミッション」という働き方のメリットとデメリット
疑問1:そもそも、不動産営業の「インセンティブ制度」って何ですか?
まずは、一番の基本からお話ししますね。インセンティブ制度とは、一言で言うと「個人の営業成績に応じて、固定給とは別に支払われる成功報酬」のことです。一般的には「歩合給」や「業績給」とも呼ばれています。
不動産業界でこの制度が広く採用されているのには、はっきりとした理由があるんですよ。
なぜ不動産業界ではインセンティブが一般的なの?
その最大の理由は、不動産という商品が、一件あたりの取引金額が非常に大きいことにあります。
例えば、営業担当者が一件5,000万円のマンションの売買を仲介した場合、会社には法律で定められた「仲介手数料」として、大きな収益がもたらされます。その収益に大きく貢献した営業担当者個人に対して、会社が「ありがとう、よく頑張ってくれましたね」という形で、利益の一部を還元する。これがインセンティブの基本的な考え方なんです。
この仕組みがあることで、営業担当者は「もっと頑張ろう!」という高いモチベーションを維持できますし、会社側は優秀な人材を確保しやすくなるんですね。両者にとって、とても合理的な制度だと言えるのではないでしょうか。
インセンティブ制度の主な種類
「インセンティブ」と一言で言っても、その形は会社によって様々です。会社の文化や営業戦略が色濃く反映される部分でもありますので、ご自身がどんな働き方をしたいかを考えながら、それぞれの特徴を見てみてくださいね。
不動産営業の主な給与体系パターン
種類 | 特徴 | どんな人に向いているか |
---|---|---|
① 固定給 + 歩合給 | 最も一般的なタイプです。 毎月の安定収入に、成果が上乗せされます。 | まずは安定した環境で、自分の実力を試してみたい方。未経験からの転職では、このタイプが安心です。 |
② 固定給 + 賞与 | 大手企業に増えているタイプです。 個人の成果は、主に年2回などの賞与(ボーナス)に反映されます。 | 個人の成果だけでなく、チームや組織への貢献も評価されたい方。組織的な営業活動を重視する会社に多いです。 |
③ 固定給 + 賞与 + 歩合給 | ①と②を組み合わせたハイブリッド型です。 | 安定性と成果主義の、両方のメリットを享受したい方。ただし、それぞれの割合は会社によって異なります。 |
④ フルコミッション(完全歩合制) | 固定給がゼロで、成果が収入の全てになります。 業務委託契約が主です。 | 自分の実力に絶対の自信があり、リスクを取ってでも青天井の収入を目指したい、経験豊富な方。 |
このように、インセンティブの形は一つではありません。「歩合給」という言葉だけに注目するのではなく、給与体系の全体像を理解することが、会社選びで失敗しないための第一歩になりますよ。

疑問2:不動産営業のインセンティブは、具体的にいくら貰えるのですか?
やはり、一番気になるのは「実際、いくら貰えるの?」という具体的な金額ですよね。ここが分からないと、ご自身の将来の収入もイメージしづらいと思います。少し専門的な話も入ってきますが、分かりやすく解説しますので、ご安心くださいね。
インセンティブの源泉「仲介手数料」の仕組み
まず、インセンティブの元手となる、会社の収益「仲介手数料」について知っておく必要があります。これは、宅地建物取引業法という法律で、上限額が決められているんですよ。
仲介手数料の速算式(売買価格が400万円超の場合)
売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
この式は、不動産業界で働く上で必ず関わるものなので、ぜひ覚えてみてくださいね。例えば、国土交通省のサイトにも報酬額についての告示が掲載されています。
リアルな数字で見るインセンティブ計算シミュレーション
それでは、この仲介手数料を元に、実際にあなたの手元に入るインセンティブを計算してみましょう。ここでは、一般的なインセンティブ率(歩合率)である10%を仮定してみますね。
【シミュレーション】あなたが5,000万円の物件の仲介を成功させたら…?
- まず、会社に入る仲介手数料(税抜)を計算します。
5,000万円 × 3% + 6万円 = 156万円
(これは、売主さまか買主さま、どちらか一方から頂く金額です) - 次に、あなたのインセンティブを計算します。
156万円(仲介手数料) × 10%(歩合率) = 15万6,000円
いかがでしょうか。たった一件の契約で、これだけの成功報酬が固定給に上乗せされる可能性があるんです。もし、これを月に2件、3件と成功させることができれば、収入は大きく跳ね上がります。
さらに、もし売主さまと買主さまの両方をあなたが見つけて仲介した場合(これを「両手取引」と呼びます)、会社には両方から仲介手数料が入るため、インセンティブも単純に倍になることが多いんですよ。そうなると、一件で30万円以上のインセンティブ、ということも十分にあり得るわけです。
この「成果の大きさが、ダイレクトに報酬に反映される」感覚こそが、不動産営業のインセンティブ制度の最大の魅力であり、醍醐味なんですね。

疑問3:高額なインセンティブを得る営業パーソンには、何か秘訣があるのですか?
同じ会社、同じ制度のもとで働いていても、驚くほどの高額インセンティブを稼ぎ出す人と、そうでない人がいるのは事実です。私がこれまで取材してきたトップセールスの方々には、いくつかの共通した仕事への取り組み方がありました。
秘訣1:「物件を仕入れる力」に長けている
不動産仲介の仕事は、「家を売りたい人(売主)」と「家を買いたい人(買主)」を繋ぐことです。このうち、トップセールスの多くは「家を売りたい人」から物件を預かる「仕入れ(売り営業)」の能力が非常に高いんです。
なぜなら、「買いたい人」は広告を出せば比較的集めやすいですが、「売りたい」という良質な物件の情報は、簡単には手に入らないからです。人としての信頼関係を築き、「あなたに、うちの売却を任せたい」と言ってもらうことが、何よりも重要になります。
魅力的な物件を預かることができれば、その物件の情報を独占的に扱えるため、ビジネスの主導権を握りやすくなります。これが、安定して高い成果を上げ、高額インセンティブに繋がる一番の近道だと言われています。
秘訣2:紹介(リファラル)の連鎖を生み出している
稼ぐ営業担当者は、目の前の一件の契約で終わり、にはしません。お取引をしたお客さまに心から満足していただくことで、「友人や知人を紹介しますね」という、新しいご縁を繋いでいただくのが非常に上手なんです。
紹介によるお客さまは、すでにある程度の信頼関係を持った状態からスタートできるため、成約率も高くなる傾向があります。この「紹介の連鎖」を自分の力で生み出せるようになると、営業成績は雪だるま式に安定し、インセンティブも大きく伸びていきます。
そのためには、契約が終わった後も、こまめにご連絡を差し上げるなど、お客さまとの長期的な関係を大切にする姿勢が欠かせません。
秘訣3:高単価エリアや物件種別を戦略的に狙っている
先ほどの計算でお分かりの通り、インセンティブの金額は、元となる物件価格に大きく左右されます。つまり、同じ一件の契約でも、扱う物件の価格が高ければ高いほど、得られるインセンティブも大きくなります。
そのため、トップセールスの方々は、都心部の高級マンションや、富裕層向けの収益物件など、高単価な取引が生まれやすいエリアや物件種別を、戦略的にメインターゲットにしていることが多いんです。
もちろん、そうした市場で戦うには、相応の知識や品格、提案力が求められます。ですが、高い目標を持つのであれば、どの市場で戦うかを意識することも、とても大切な戦略の一つなんですよ。

疑問4:インセンティブ制度で会社を選ぶ時、何に注意すれば良いですか?
ここまでインセンティブ制度の魅力についてお話ししてきましたが、良いことばかりに目を向けていると、入社後に「こんなはずじゃなかった」と後悔してしまうかもしれません。会社を選ぶ際には、いくつか注意して確認すべき大切なポイントがあります。
注意点1:インセンティブの「最低基準(ノルマ)」を確認する
多くの会社では、インセンティブが発生するための「最低基準」、いわゆるノルマが設定されています。例えば、「月に〇〇円以上の仲介手数料を上げなければ、インセンティブは支払われない」といったルールです。
この基準がどのくらいの高さなのかは、必ず確認しておきたいポイントです。あまりに高い基準だと、達成できずにインセンティブが全く貰えない、という状況に陥ってしまう可能性もあります。
また、ノルマを達成できなかった場合のペナルティや、社内の雰囲気についても、面接などでそれとなく確認できると良いですね。常に数字に追われるプレッシャーが、ご自身の性格に合っているかどうかも、見極める必要があります。
注意点2:インセンティブの「支払いタイミング」を把握する
インセンティブがいつ支払われるのか、というのも実は重要なポイントです。これも会社によって様々なんです。
- 契約書を交わした翌月の給与で支払われる会社
- 物件の引渡し(決済)が完了した翌月に支払われる会社
- 数ヶ月分の成績をまとめて、賞与(ボーナス)として支払われる会社
契約から引渡しまでは数ヶ月かかることも珍しくありません。成果が出てから、実際に収入として手元に入るまでのタイムラグがどのくらいあるのかを事前に知っておかないと、ご自身の生活設計に影響が出ることもありますので、注意してくださいね。
注意点3:「みなし残業代」とインセンティブの関係を理解する
求人票を見ていると、「固定給に〇〇時間分のみなし残業代(固定残業代)を含む」という表記をよく見かけます。これは、一定時間分の残業代が、あらかじめ給与に含まれている、ということです。
ここで注意したいのは、インセンティブの計算が、この「みなし残業代」をどう扱っているかです。会社によっては、インセンティブの額が、みなし残業代を超えた部分からしか支払われない、というケースも稀にあります。
給与規定は少し複雑で分かりにくい部分ですが、ご自身の収入に直結する非常に大切な部分です。面接の場で、納得できるまで丁寧に質問することが、後悔しない会社選びに繋がります。
疑問5:「フルコミッション」は、本当に夢のある働き方なのですか?
不動産営業のインセンティブ制度を語る上で、避けて通れないのが「フルコミッション(完全歩合制)」という働き方です。固定給ゼロ、成果が収入の全て、という究極の実力主義の世界。そこには大きな光と、同時に深い影も存在します。
光:年収「億」も夢ではない、青天井の報酬
フルコミッションの最大の魅力は、なんといってもその圧倒的に高い歩合率です。一般の会社員では5%〜20%が相場だとお話ししましたが、フルコミッションの世界では、仲介手数料の50%〜90%が営業担当者の報酬になることも珍しくありません。
先ほどの5,000万円の物件の例で言えば、156万円の仲介手数料のうち、78万円から140万円近くが、たった一件でご自身の収入になる計算です。これを年間でコンスタントにこなせば、年収数千万円、そして「1億円プレーヤー」という領域も、決して夢物語ではなくなってきます。
私が知る中でも、この働き方で1億円以上を稼いでいる方が、実際にいらっしゃいます。自分の実力一つで、どこまでも高みを目指せる。これほど夢のある働き方も、なかなかないかもしれませんね。

影:収入ゼロのリスクと、全ての自己責任
しかし、その大きな光には、同じくらい大きな影が伴います。固定給がゼロということは、成果がなければ、その月の収入もゼロだということです。ご家族がいらっしゃる方や、安定した生活を望む方にとっては、非常に大きなリスクになります。
また、業務委託契約となるため、社会保険に加入できず、国民健康保険や国民年金に自分で加入する必要があります。交通費や広告費といった営業活動に必要な経費も、自己負担となるケースが多いんです。
このように、フルコミッションは、まさにハイリスク・ハイリターンな働き方です。豊富な経験と実績、そして強靭な精神力を持ったプロフェッショナルが選ぶ道であり、未経験の方がいきなり挑戦するのは、賢明な選択とは言えないかもしれません。
まずは固定給のある会社でしっかりと実力と人脈を築き、ご自身の力に絶対の自信が持てた時に、一つの選択肢として考えてみるのが良いのではないでしょうか。
まとめ:不動産営業のインセンティブ制度が、あなたの努力を正当に評価する理由
今回は、不動産営業のインセンティブ制度について、皆さんが抱くであろう5つの疑問にお答えする形でお話ししてきました。最後に、大切なポイントをもう一度、振り返ってみましょうか。
不動産営業のインセンティブ制度が魅力的な理由のまとめ
- 制度の基本
高額な商品を扱う不動産業界で、個人の成果に報いるための合理的な仕組みです。給与体系は会社によって様々で、ご自身の志向に合ったものを選ぶことが大切です。 - 具体的な報酬
一件の成果が、数十万円の報酬に繋がることも珍しくありません。成果の大きさがダイレクトに収入に反映される、大きなやりがいがあります。 - 高収入の秘訣
「仕入れ力」を磨き、お客さまからの「紹介」を生み出し、戦略的に市場を選ぶことが、高額インセンティブへの道を開きます。 - 注意すべき点
ノルマや支払いタイミング、みなし残業代との関係など、入社前に必ず確認すべきポイントがあります。良い面だけでなく、リスクも理解することが重要です。
インセンティブ制度は、時に厳しいプレッシャーも伴いますが、それ以上に、ご自身の努力や工夫が、明確な「報酬」という形で返ってくる、とても公平でやりがいのある仕組みです。
この制度を正しく理解し、ご自身のキャリアプランにどう活かしていくかを考えることが、あなたがより豊かに働くための一つの鍵になるかもしれませんね。