「不動産営業に挑戦してみたいけど、やっぱりノルマが気になる…」「一体、毎月どのくらいの目標を課されるんだろう?」「未経験の自分でも、本当に達成できる数字なのかな…」。そんな風に、未知なる「ノルマ」の存在に、期待と不安が入り混じった気持ちでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
お気持ち、とてもよく分かります。「ノルマ」という言葉の響きには、どうしても厳しいプレッシャーが伴いますものね。こんにちは。私は以前、大手不動産会社で営業として働き、現在は広報として、まさにそのリアルな目標設定の現場を、数多く見てきました。
この記事では、そんな私の経験を基に、不動産営業のノルマが、職種によって「どのくらい」違うのか、具体的な数字を交えながら、未経験者の方にも分かりやすく解説していきます。そして、ただ数字を示すだけでなく、その目標が持つ本当の意味や、未経験者が無理なく達成していくための考え方まで、丁寧にお話ししていきますね。
この記事でお伝えしたいこと
- 不動産営業の「ノルマ」の本当の意味と、その設定方法
- 【職種別】売買仲介、賃貸仲介、投資用不動産…リアルなノルマの数値を大公開!
- なぜ、同じ会社でも人によってノルマが違うことがあるのか?
- 未経験者でも安心!入社後、無理なく目標達成するための3つのステップ
- 「厳しいけど、育ててくれる」優良な会社を見抜くためのポイント

そもそも不動産営業のノルマは「どのくらい」厳しいものなの?
具体的な数字のお話に入る前に、まず、不動産営業の「ノルマ」が、どのように設定され、どんな意味を持っているのか、その大前提についてご説明させてください。これを知っておくだけで、数字のプレッシャーに対する心の持ちようが、大きく変わってくるはずですよ。
「ノルマ」は、個人の能力と会社の期待値から設定される
不動産会社のノルマ(目標)は、決して、根拠なく「えいやっ!」で決められているわけではありません。多くの場合、以下の2つの要素から、合理的に設定されています。
- 会社の事業計画:会社全体として、今年度はどれくらいの売上・利益を目指すのか、という大きな目標。
- 個人の能力と経験:社員一人ひとりの、経験年数や役職、過去の実績など。
つまり、会社が成長するために必要な目標と、社員が「少し頑張れば達成できそうだ」と感じられる、現実的な目標。そのバランスを考えて、一人ひとりのノルマが設定されているんです。ですから、入社したばかりの未経験者に、いきなりトップセールスと同じ、天文学的なノルマが課される、なんてことは、まずありませんので、安心してくださいね。
「成果目標」と「行動目標」。重視されるのはどっち?
「ノルマ」と一括りに言っても、その内容は会社によって様々です。大きく分けると、2つのタイプがあります。
- 成果目標(売上目標):「今月の仲介手数料売上、100万円」といった、最終的な結果(売上)を目標とするもの。
- 行動目標(プロセス目標):「今週、お客様とのアポイントを5件取る」といった、結果に至るまでの過程(行動量)を目標とするもの。
どちらを重視するかは、会社の文化によりますが、特に未経験者のうちは、結果だけでなく、日々のプロセスをきちんと評価してくれる会社を選ぶことが、とても大切です。なぜなら、最初はなかなか成果が出なくても、正しい行動を続けていれば、必ず結果は後からついてくるからです。こうした会社は、社員をじっくり育てる文化がある、と言えるでしょう。
これからお話しするノルマの数値は、主に「成果目標」に関するものです。でも、その数字だけを見て「大変そう…」と判断するのではなく、その会社が、日々の行動プロセスをどれだけ見てくれているか、という視点も、ぜひ忘れないでくださいね。
【職種別】不動産営業のリアルなノルマはどのくらい?具体的な数値を公開!
さて、いよいよ本題です。不動産営業の職種別に、一般的なノルマの目安となる数値を、具体的な計算例も交えながら、ご紹介していきます。ご自身が興味のある職種は、一体どのくらいの目標を追いかけているのか、リアルな姿を想像してみてください。
※ここに示す数字は、あくまで一般的な目安です。会社の規模、エリア、個人の経験によって、大きく変動することをご理解ください。
1. 売買仲介営業のノルマ
中古マンションや一戸建てなど、個人のお客様の「売りたい」「買いたい」を繋ぐお仕事です。不動産営業と聞いて、多くの方がイメージするのが、この職種かもしれません。
【ノルマの目安(月間)】
- 若手・未経験者:仲介手数料売上 50万円~100万円 程度
- 中堅社員:仲介手数料売 statistiques 100万円~200万円 程度
- トップセールス:仲介手数料売上 300万円以上
【この数字、どのくらい大変?】
仲介手数料は、一般的に「(売買価格の3% + 6万円)+ 消費税」で計算されます。例えば、4,000万円の物件を、売主様と買主様の双方から仲介(両手仲介)した場合、会社が得られる手数料の売上は、約277万円になります。
つまり、中堅社員の月間ノルマ150万円を達成するには、「4,000万円の物件を、月に一件、片手仲介(売主か買主のどちらか一方を担当)する」というのが、一つの目安になります。どうでしょう、少しだけ、具体的なイメージが湧いてきませんか?

2. 賃貸仲介営業のノルマ
アパートやマンションなど、お部屋を「借りたい」お客様に物件を紹介するお仕事です。未経験から始めやすく、お客様との距離が近いのが特徴です。
【ノルマの目安(月間)】
- 若手・未経験者:仲介手数料売上 30万円~50万円 程度
- 中堅社員:仲介手数料売上 50万円~80万円 程度
【この数字、どのくらい大変?】
賃貸の仲介手数料は、一般的に「家賃の1ヶ月分 + 消費税」です。例えば、家賃8万円のお部屋を契約した場合、手数料売上は約8.8万円になります。
若手社員の月間ノルマ40万円を達成するには、家賃8万円のお部屋を、月に5件ほど契約する必要がある、という計算になります。売買仲介に比べて、一件あたりの単価は低いですが、その分、契約の件数を多くこなしていく、というビジネスモデルなんですね。特に、引っ越しシーズンの1月~3月は、この目標がさらに高くなることもあります。
3. 投資用不動産販売のノルマ
ワンルームマンションなどを、資産運用を目的とするお客様に販売するお仕事です。高収入を目指せる一方、営業スタイルはハードな傾向があります。
【ノルマの目安(月間~四半期)】
- 契約件数:月に1件、あるいは、3ヶ月(四半期)に2~3件 程度
【この数字、どのくらい大変?】
投資用不動産の場合、ノルマは売上金額ではなく、「契約件数」で設定されることが多いです。なぜなら、一件あたりの契約金額が数千万円と非常に大きく、毎月コンスタントに契約することが難しいからです。
「月にたった1件?」と思われるかもしれませんが、この1件を取るのが、非常に大変なんです。お客様は、プロの投資家や、富裕層の方々。生半可な知識では、全く相手にされません。また、営業方法も、電話でアポイントを取る「テレアポ」が中心になることが多く、100件、200件と電話をかけても、アポイントが1件も取れない、なんてこともザラにあります。
その分、1件契約できた時のインセンティブ(歩合給)は、他の職種に比べて非常に高く設定されているのが特徴です。
4. 新築戸建て・マンション販売のノルマ
モデルルームや分譲地で、新築物件を販売するお仕事です。個人ではなく、チームで目標を追うことが多いのが特徴です。
【ノルマの目安(チーム全体)】
- 契約件数:月間で3~5戸、あるいは、「この分譲地を、半年で完売させる」といった、プロジェクト単位での目標設定
【この数字、どのくらい大変?】
新築販売の場合、個人のノルマというよりは、「営業所全体で、今月は何戸売ろう!」という、チームでの目標設定が主流です。
一見、個人へのプレッシャーは少ないように感じるかもしれません。しかし、自分の成績が、チーム全体の目標達成の足を引っ張ってしまう、という、また違った種類のプレッシャーがあります。チームで一丸となって、大きな目標を達成した時の喜びは格別ですが、協調性や、チームへの貢献意識が強く求められる仕事だと言えるでしょう。
ノルマと上手に付き合うために。未経験者が知っておくべき3つの心構え
リアルなノルマの数値を見て、少しだけ、身が引き締まる思いがしたかもしれません。でも、大丈夫です。ここでは、入社したばかりの未経験者の方が、こうした目標と上手に付き合い、無理なく達成していくための、大切な心構えを3つ、お伝えしますね。
心構え1:「完璧」を目指さず、まずは「達成率50%」を目指す
入社して、初めてノルマを与えられた時、多くの真面目な新人さんは、「絶対に100%達成しなくちゃ!」と、自分を追い込みすぎてしまいます。でも、その必要は全くありません。
会社側も、最初からあなたが100%達成できるとは思っていません。むしろ、最初の3ヶ月くらいは、「仕事の流れを覚え、まずは目標の半分を達成できれば、上出来!」と考えていることがほとんどです。焦らず、まずは目の前のお客様一人ひとりに、誠実に対応すること。その積み重ねが、気づけば、目標達成へとつながっていきます。
心構え2:「なぜ達成できないか」を、上司や先輩と一緒に考える
もし、目標が達成できなかった時、一番やってはいけないのは、一人で落ち込み、抱え込んでしまうことです。そんな時こそ、あなたの成長のチャンスなんです。
勇気を出して、上司や先輩に、「すみません、今月は目標に届きませんでした。自分では、〇〇が課題だと思うのですが、どうすれば改善できるでしょうか?」と、素直に相談してみてください。経験豊富な先輩たちは、あなたが気づいていない、的確なアドバイスをくれるはずです。素直に助けを求められること。それも、成長のために必要な、大切なスキルなんですよ。
心構え3:「自分のための目標」に、こっそり置き換えてみる
会社から与えられた数字を、そのまま「ノルマ」として捉えると、どうしても「やらされている感」が出てしまいます。そこで、少しだけ視点を変えて、それを自分自身の、プライベートな目標に置き換えてみるんです。
例えば、「今月のノルマ100万円」を、「今月、インセンティブで10万円稼いで、ずっと欲しかったあの腕時計を買う!」という目標に変換してみる。すると、不思議なことに、仕事へのモチベーションが、ぐっと上がってきませんか?
会社のためのノルマではなく、自分の夢を叶えるための、ワクワクする目標。そんな風に、ポジティブに捉え直す工夫も、楽しく仕事を続けるための、大切な秘訣です。

まとめ:不動産営業のノルマは、あなたの可能性を映す「鏡」
今回は、不動産営業のリアルなノルマについて、具体的な数字も交えながら、詳しくお話しさせていただきました。最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 不動産営業のノルマは、職種によって大きく異なります。売買仲介は月100万円前後、賃貸仲介は月50万円前後、投資用不動産は月1件などが、一つの目安となります。
- ただし、この数字は、あくまで会社の利益目標であり、あなたの給与に直接反映されるインセンティブの額とは異なります。
- 未経験者に、いきなり無茶なノルマが課されることは、まずありません。個人の経験や能力に応じて、現実的な目標が設定されます。
- 大切なのは、数字の大きさだけに怯えるのではなく、その会社が、日々の行動プロセスをきちんと評価し、未達の時にも、一緒に考えてくれる文化があるかどうかを見極めることです。
- ノルマは、あなたを苦しめる敵ではなく、あなたの現在地を教え、成長へと導いてくれる「鏡」であり、「羅針盤」です。
不動産営業のノルマは、確かに、時にはあなたの前に、高い壁として立ちはだかるかもしれません。でも、その壁の高さは、そのまま、あなたの可能性の大きさでもあるんです。その壁を乗り越えた時、あなたは、今よりもずっと強く、そしてたくましい自分に出会えるはずです。
この記事が、あなたの「ノルマ」に対する漠然とした不安を、具体的な挑戦への意欲に変える、ささやかなきっかけとなれたなら、これほど嬉しいことはありません。