「不動産営業に挑戦してみたいけれど、きついって聞くし、どの仕事が自分に合っているんだろう…」。そんな風に、期待と不安が入り混じった気持ちでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
ひとくちに「不動産営業」と言っても、その仕事内容は本当に様々です。扱う物件が違えば、お客様も、営業のスタイルも、そして「きつさ」の種類や度合いも全く変わってくるんですよね。
こんにちは。私は以前、大手不動産会社で営業を経験し、現在は広報として多くの営業の現場を取材しています。そんな経験から、今回は少し踏み込んで、不動産営業の職種を「きつさ」という視点からランキング形式でご紹介したいと思います。それぞれの仕事のリアルな大変さと、その先にあるやりがいを丁寧にお伝えしていきますね。
この記事でお伝えしたいこと
- 元営業が解説する不動産営業の「きつさ順」ランキングTOP5
- それぞれの職種がなぜ「きつい」のか、その具体的な理由と仕事内容
- 「きつさ」の裏側にある、その仕事ならではの大きなやりがいと魅力
- どんな人がそれぞれの職種に向いているのか、適性のヒント
- 後悔しない職種選びのために、知っておいていただきたいこと

【結論】不動産営業の「きつさ順」ランキングTOP5
それでは早速ですが、私がこれまでに見聞きしてきた情報や、たくさんの営業さんへの取材経験を基に考えた、不動産営業の「きつさ順」ランキングを発表したいと思います。もちろん、これはあくまで一般的な傾向で、会社の文化や個人の適性によって感じ方は人それぞれ、ということを心に留めておいてくださいね。
ここでは、なぜその順位なのか、ポイントだけを先にお伝えします。詳しい理由は、この後じっくりとご説明していきます。
順位 | 職種 | 「きつさ」のポイント |
---|---|---|
第1位 | 用地仕入れ | 事業の根幹を担う究極のプレッシャー 高度な専門知識と交渉力が必要 |
第2位 | 投資用不動産販売 | 精神的にタフさが求められる新規開拓 厳しい成果主義と高額商品ゆえの不信感 |
第3位 | 新築戸建て販売 | 土日祝が完全に仕事になる生活リズム チームでの目標達成プレッシャー |
第4位 | 売買仲介 | 売主と買主の板挟みになる調整力 お客様の人生を背負う精神的な責任の重さ |
第5位 | 賃貸仲介 | 繁忙期の圧倒的な業務量 スピード勝負とクレーム対応の多さ |
このランキングを見て、いかがでしょうか。「やっぱり大変そう…」と感じたかもしれませんし、「意外な職種が上位だな」と思ったかもしれません。大切なのは、この「きつさ」が、ご自身の性格や価値観に合っているかどうかです。それでは、それぞれの職種について詳しく見ていきましょう。
なぜこの順位に?ランキング別・不動産営業の「きつい」理由を徹底解説
ここからは、先ほどのランキングについて、一つひとつの職種がなぜ「きつい」と言われるのか、その具体的な理由と仕事内容を詳しく掘り下げていきます。それぞれの仕事のリアルな姿を知ることで、ご自身が働くイメージがより具体的になるはずですよ。
第1位:用地仕入れ(土地仕入れ)
数ある不動産営業の中で、私が最も「きつい」と考えるのが、この「用地仕入れ」です。マンションや商業施設などを建てるための土地を、地主さんから買い付けるお仕事ですね。表舞台に出ることは少ないですが、不動産事業のまさに心臓部と言えるポジションです。
きつい理由1:事業の根幹を担う「究極のプレッシャー」
用地仕入れの営業にかかるプレッシャーは、他の営業職とは比べ物にならないほど大きいものがあります。なぜなら、土地を仕入れることができなければ、会社はマンションも戸建ても建てることができず、売るものそのものがなくなってしまうからです。
会社の売上や事業計画そのものを左右する、非常に重要な役割なんですね。良い土地を、適正な価格で仕入れられるかどうか。その責任の重さが、常に肩にのしかかるプレッシャーとなります。
きつい理由2:一筋縄ではいかない「地主との交渉」
土地は、単なる「モノ」ではありません。多くの地主さんにとって、先祖代々受け継いできた大切な資産であり、思い出の詰まった場所です。そんな大切な土地を「売ってください」とお願いするわけですから、交渉は簡単には進みません。
時には何年もかけて地主さんの元へ通い詰め、人間関係をゼロから築いていく必要があります。「あなたになら、この土地を任せてもいい」と思っていただけるような、深い信頼関係を築くための、粘り強さと誠実さが求められるんです。この人間関係の構築が、最も難しく、精神的にもタフさが求められる部分ですね。
きつい理由3:プロ中のプロに求められる「高度な専門知識」
用地仕入れは、ただ土地を買うだけではありません。その土地にどんな建物が建てられるのか、事業として採算が取れるのかを正確に判断する必要があります。そのためには、非常に高度で幅広い専門知識が不可欠です。
- 法律: 都市計画法、建築基準法、農地法など、土地に関わる複雑な法律。
- 調査能力: 役所や法務局での登記簿や公図の確認、埋蔵文化財の有無など。
- 事業収支計算: 建築費や販売価格を予測し、事業全体の利益を計算する能力。
これらの知識を駆使して、ライバル他社よりも早く、良い条件の土地情報を見つけ出し、事業化の判断を下さなければなりません。まさに不動産のプロフェッショナルとしての総合力が試される仕事だと言えます。
【向いているのはこんな人】
街づくりというスケールの大きな仕事に魅力を感じる方、強い精神力と粘り強さに自信がある方、知的好奇心が旺盛で探求心のある方には、大きなやりがいを感じられる仕事です。

第2位:投資用不動産販売
次点は、ワンルームマンションなどを資産運用目的で購入するお客様に販売する「投資用不動産販売」です。高収入を得られる可能性がある一方で、その営業スタイルはかなりハードだと言われています。
きつい理由1:心が折れそうになる「新規開拓営業」
投資用不動産販売の営業で最もきついと言われるのが、新規顧客の開拓です。多くの場合、電話帳や名簿を基に片っ端から電話をかける「テレアポ」や、予告なしにオフィスを訪問する「飛び込み営業」が中心となります。
当然ですが、ほとんどは話も聞いてもらえずに断られます。「ガチャ切り」は日常茶飯事。1日に100件、200件と電話をかけ続けても、アポイントが1件も取れない日も珍しくありません。この「断られることが当たり前」という環境に耐えられる強靭なメンタルが求められます。
実際に、SNSなどでもその過酷さが語られることがあります。
「不動産投資のテレアポ、1日中やって心が無になる。でも1本アポ取れた時の喜びは大きい。この繰り返し。」
きつい理由2:厳しい「成果主義」とノルマ
この業界は、成果が給与に直結する「フルコミッション(完全歩合制)」に近い給与体系をとっている会社も少なくありません。契約を1本取れば数百万円のインセンティブが手に入ることもあり、年収数千万円を稼ぐ営業マンも存在します。
しかし、それは裏を返せば、契約が取れなければ収入がゼロに近くなるということでもあります。毎月課される高いノルマのプレッシャーは相当なもので、「稼げるか、去るか」という厳しい世界なんです。
きつい理由3:お客様の強い「警戒心」
「儲かりますよ」という営業トークに対して、多くのお客様は強い警戒心を持っています。特に電話でのセールスとなると、「怪しい」「騙されるんじゃないか」と思われてしまうことも少なくありません。このお客様の不信感を、ロジカルな説明と誠実な対応で信頼に変えていく高いスキルが必要になります。
【向いているのはこんな人】
とにかく稼ぎたいという強い意欲がある方、精神的に非常にタフな方、断られることにめげないポジティブな思考の持ち主、ロジカルな提案で人を説득するのが得意な方には、夢のある仕事です。
第3位:新築戸建て販売
3位は、モデルハウスなどを拠点に、新築の分譲住宅や注文住宅を販売するお仕事です。お客様の「夢のマイホーム」の実現をお手伝いする、華やかなイメージもありますが、特有のきつさがあります。
きつい理由1:プライベートを犠牲にしがちな「勤務スタイル」
この仕事の最大の特徴は、お客様が来場しやすい土日祝日がメインの勤務日になることです。平日に休みを取ることになるため、家族や友人とはスケジュールが合わないことが多くなります。お子さんの運動会や友人の結婚式に参加しにくい、といった悩みを持つ営業さんは少なくありません。
また、お客様のご案内が夕方から始まり、熱心なお客様だと夜遅くまで話し込むこともあります。平日はその分の事務処理や次のお客様への準備などに追われ、結果的に長時間労働になりやすい傾向があるんです。
きつい理由2:「チーム」で追う目標のプレッシャー
新築販売は、多くの場合、営業所のメンバーや現場のチーム全体で「この分譲地を完売させる」といった共通の目標を追いかけます。チームの一体感が生まれるという良い面がある一方で、自分の成績がチーム全体の足を引っ張ってしまうのではないか、というプレッシャーを感じることもあります。
【向いているのはこんな人】
「家」そのものに興味があり、お客様の夢を形にする仕事に喜びを感じる方、チームで協力して目標を達成することにやりがいを感じる方、土日出勤のライフスタイルに抵抗がない方に向いています。

第4位:売買仲介
私が最初に経験した、中古マンションや一戸建てを「売りたい人」と「買いたい人」の間に入って取引を成立させるお仕事です。不動産営業と聞いて、多くの方がイメージするのがこの職種かもしれません。
きつい理由1:「売主」と「買主」の板挟み
売買仲介の最も難しい点は、利害が相反する二者の間に立つことです。売主様は「できるだけ高く売りたい」、買主様は「できるだけ安く買いたい」。この両者の希望をうまく調整し、双方が納得できる着地点を見つけるための、高度な交渉力とバランス感覚が求められます。
時には、価格交渉が難航したり、条件面で折り合いがつかなかったりして、双方から不満を言われてしまうこともあります。この板挟みの状態が、精神的にきついと感じる場面です。
きつい理由2:人生を左右する「責任の重さ」
扱う金額が数千万円と非常に高額なため、一つのミスがお客様の人生に大きな影響を与えかねません。物件の調査漏れや、契約書の説明不足などがあれば、後々大きなトラブルに発展してしまいます。この「絶対に失敗できない」という精神的なプレッシャーは、常に付きまといます。
【向いているのはこんな人】
人の話を聞き、利害を調整する役割が得意な方、お客様の人生の大きな決断に寄り添い、役に立ちたいという気持ちが強い方、幅広い業務をマルチタスクでこなせる方に向いています。
第5位:賃貸仲介
最後は、アパートやマンションなどを借りたいお客様にお部屋を紹介する賃貸仲介です。他の職種に比べて未経験から始めやすく、身近な存在ですが、特有の忙しさがあります。
きつい理由1:繁忙期の「圧倒的な業務量」
学生や新社会人が部屋探しを始める1月~3月は、賃貸仲介の最大の繁忙期です。この時期は、文字通り猫の手も借りたいほどの忙しさになります。朝から晩までお客様の接客と物件案内に追われ、休憩もままならない、なんてことも珍しくありません。
お客様の数が多い分、申し込みや契約に関する事務処理も膨大になります。この短期集中型の激務が、賃貸仲介の最もきつい点と言えるでしょう。
きつい理由2:「スピード」と「クレーム対応」
賃貸物件は、良い条件の部屋からどんどん決まっていきます。お客様から問い合わせがあったら即座に対応し、すぐに内見に繋げないと、他の会社に先を越されてしまいます。この常にスピードを求められる環境に、プレッシャーを感じる人もいます。
また、入居後の「お湯が出ない」「隣がうるさい」といったクレームの一次対応を任されることも多く、大家さんと入居者さんの間で対応に苦慮することもあります。
【向いているのはこんな人】
フットワークが軽く、テキパキと仕事をこなすのが好きな方、多くの人と接する仕事に喜びを感じる方、新生活のスタートを応援することにやりがいを感じる方に向いています。
「きつい」の裏側にある大きなやりがいと適性
ここまで、それぞれの職種の「きつい」側面を中心にお話ししてきましたが、もちろん大変なことばかりではありません。むしろ、そのきつさを乗り越えた先には、他では味わえないほどの大きなやりがいが待っているんです。
大変さとやりがいは表裏一体
きつい仕事であるほど、それを成し遂げた時の喜びやリターンは大きいものです。これは不動産営業のすべての職種に共通しています。
- 用地仕入れ:何もない土地から新しい街が生まれる、その第一歩を担えるスケールの大きな達成感。
- 投資用不動産:高収入という明確なリターンと、お客様の資産形成に貢献できる喜び。
- 新築戸建て:お客様と喜びを分かち合いながら、「夢のマイホーム」という形あるものを一緒に作り上げられる感動。
- 売買仲介:「あなたに任せてよかった」という、お客様の人生の節目に深く関われたことへの感謝の言葉。
- 賃貸仲介:たくさんの「ありがとう」に直接触れられる機会の多さと、新生活を応援できる身近なやりがい。
どの「きつさ」を受け入れ、どの「やりがい」を求めるのか。それが職種選びの鍵になります。
あなたはどのタイプ?自己分析で見つける最適な職種
最後に、ご自身がどの職種に向いているか、簡単な自己分析をしてみましょう。ご自身の性格や価値観と照らし合わせながら、考えてみてくださいね。
Q. あなたが仕事で最も重視することは何ですか?
A. とにかく高収入!成果が正当に評価される環境で働きたい。
→ 投資用不動産販売や、歩合率の高い売買仲介が選択肢になるかもしれません。
B. スケールの大きな仕事で、社会に貢献している実感を得たい。
→ 用地仕入れは、まさに街づくりそのものに関われる仕事です。
C. お客様にじっくり寄り添い、人生の大きな決断をサポートしたい。
→ 売買仲介や新築戸建て販売は、お客様との深い関係性が築けます。
D. 多くの人と関わり、テキパキと仕事をこなすのが好き。
→ 賃貸仲介は、スピード感とコミュニケーション能力が活かせます。
E. チームで協力しながら一つの目標に向かって頑張りたい。
→ 新築戸建て販売は、チームワークを重視する現場が多いです。
もちろん、これはほんの一例です。大切なのは、企業のウェブサイトや転職エージェントからの情報だけでなく、実際に働く人の声を聞いたり、面接の場で質問したりして、リアルな情報を集めることです。

まとめ:不動産営業の「きつさ順」ランキングから見えた適性の見つけ方
今回は、不動産営業の職種を「きつさ」という切り口でランキングにしてみました。最後に、この記事の要点をまとめますね。
- 不動産営業の「きつさ」は職種によって質も度合いも全く異なります。一般的には、事業の根幹を担う用地仕入れや、メンタルが試される投資用不動産販売が「きつい」職種の上位にあげられます。
- きつさの理由は、プレッシャーの種類、営業スタイル(新規開拓か反響か)、お客様との関係性、労働時間など、多岐にわたります。
- しかし、「きつい」仕事であるほど、それを乗り越えた時の達成感や、金銭的なリターン、お客様からの感謝といった「やりがい」も大きいのが不動産営業の魅力です。
- 最も大切なのは、ランキングの順位に一喜一憂するのではなく、それぞれの仕事の「きつさ」と「やりがい」を正しく理解し、ご自身の性格や価値観に合った職種を見つけることです。
どの仕事にも、楽なことばかりではありません。でも、自分が「これなら頑張れる」と思えるきつさの種類と、「このために頑張りたい」と思えるやりがいを見つけることができれば、きっと不動産営業という仕事は、あなたにとって最高のステージになるはずです。
この記事が、あなたがご自身のキャリアと向き合い、最適な一歩を踏み出すための、ささやかな手助けとなれたら、こんなに嬉しいことはありません。