「不動産営業って、なんだか自分のペースで自由に働いているイメージがあるけれど、本当のところはどうなんだろう?」「朝、出社してから夜、お家に帰るまで、一体どんな風に時間を使っているの?」
そんな風に、キラキラして見える不動産業界の、ヴェールに包まれた「一日」に、興味と少しの不安を感じていらっしゃるのかもしれませんね。
こんにちは。私も営業をしていた頃、友人から「自由な時間があっていいね」なんて言われることがよくありました。でも、その言葉を聞くたびに、少しだけ苦笑いしてしまったのを覚えています。
なぜなら、その自由に見える時間の裏側には、お客様への想いと、成果へのこだわりが詰まった、緻密な時間の使い方が隠されているからなんです。この記事では、不動産営業の「リアルな一日」を、具体的なスケジュールを通して、覗き見ていきたいと思います。
この記事でお伝えしたいこと
- 不動産営業の基本的な一日のタイムスケジュール
- 業務別(売買・賃貸)で見る、一日の流れの具体的な違い
- 新人営業とトップ営業では、一日の使い方がどう違うのか
- 「理想」と「現実」のギャップを知り、後悔しないためのヒント
不動産営業の一日、基本的なタイムスケジュールと仕事内容
まずは、不動産営業の一日が、どんな風に構成されているのか、その基本的な流れから見ていきましょう。もちろん、会社や個人のスタイルによって違いはありますが、多くの営業スタッフが、このような時間軸で動いているんですよ。一日の流れを、大きく3つの時間帯に分けてご説明しますね。
【午前 9:00〜12:00】始業・情報収集・1日の準備を行う時間
一日の成果は、午前中の準備で決まる。そう言っても、過言ではないほど、午前中は大切な時間です。お客様と会う前の、いわば「仕込み」の時間ですね。
9:00 始業・朝礼
出社したら、まずはオフィス全体の清掃から一日が始まる、という会社も多いんですよ。お客様をお迎えする空間を整える、大切な習慣です。その後、メールや社内チャットをチェックし、今日のタスクを確認します。
そして、多くの会社で行われるのが「朝礼」です。ここでは、連絡事項の共有だけでなく、各人の進捗状況の報告や、支店長からの激励などが行われます。会社によっては、全員で営業目標を唱和したり、ロープレを行ったりすることもあり、一日の始まりにグッと気合が入る瞬間です。
9:30 情報収集・物件確認
不動産業界は、情報の鮮度が命です。この時間に、担当エリアの新しい物件情報や、価格が変更になった物件の情報を、不動産会社専門のデータベース(レインズ)などで徹底的にチェックします。
「この物件、昨日より50万円も価格が下がっている!あのお客様にご提案できるかも!」といった発見が、今日の成果に繋がるかもしれないんです。お客様の希望に合う物件を見つけたら、すぐに資料を作成し、提案の準備を進めます。
10:30 追客・アポイント獲得
「追客(ついきゃく)」とは、以前にお問い合わせいただいたものの、まだご契約に至っていないお客様へ、改めてアプローチすることです。
「その後、お住まい探しのご状況はいかがでしょうか?」「先日ご希望されていたエリアに、新しい物件が出ましたので、ご紹介させていただけますでしょうか?」といったお電話やメールを差し上げ、お客様との関係を繋ぎ、再訪のきっかけを作ります。
11:30 外出・役所調査など
午後のアポイントに向けて、少し早めに外出することも多いです。ご案内する物件の鍵を管理会社まで借りに行ったり、契約に必要な書類を取得するために、法務局や市区町村の役所を回ったりすることもあります。こうした地道な準備が、スムーズな取引を支えているんですね。
【午後 12:00〜18:00】お客様対応と外回りが中心の時間
午後になると、いよいよお客様と直接お会いする、営業活動のメインの時間帯に入っていきます。体力と集中力が求められる時間帯です。
12:00 昼食
スケジュールの上では12時と書きましたが、不動産営業の昼食時間は、正直なところ、かなり不規則になりがちです。お客様のご都合が優先なので、「気づいたら15時を過ぎていた」「移動の合間に、車の中でおにぎりを一つだけ」なんてことも、日常茶飯事なんですよ。
13:00 お客様との商談・物件案内(内見)
オフィスや、お客様のご自宅、時にはカフェなどで、お客様のご要望をじっくり伺ったり、物件のご提案をしたりします。そして、お客様が物件に興味を持たれたら、実際に現地へご案内する「内見」を行います。
内見では、ただお部屋を見ていただくだけでなく、日当たりや風通し、周辺の環境まで、お客様がそこで暮らす未来を、ありありとイメージできるようなご説明を心がけます。この時間が、お客様の心を動かす、一番の勝負どころなんです。

16:00 物件の査定・調査・写真撮影
「家を売りたい」というお客様からのご依頼があれば、その物件を訪問し、売却価格を算出するための「査定」を行います。建物の状態だけでなく、周辺の相場や法的な規制なども考慮する、専門知識が問われるお仕事です。
また、新しい物件を広告に掲載するための写真撮影も、大切な業務の一つ。お客様が「この物件、見てみたい!」と思ってくださるような、魅力的な写真を撮るために、アングルや光の入り方などを工夫します。
【夕方〜夜 18:00〜】事務作業と未来への種まきの時間
お客様対応がひと段落し、オフィスに戻ってきてからが、もう一つの勝負の時間です。今日一日の活動を整理し、明日の成果に繋げるための、大切な時間なんですよ。
18:00 帰社・報告書の作成
会社に戻ったら、まず今日一日の活動内容を上司に報告します。そして、お客様との面談内容や、物件の状況などを、顧客管理システムに入力していきます。この情報をチームで共有することが、組織としてお客様をサポートする上で、とても重要になるんです。
19:00 契約書類の作成・事務処理
もし、ご契約をいただけた日であれば、ここからが正念場です。契約書や、法律で定められた「重要事項説明書」といった、非常に重要な書類を作成します。一つのミスも許されない、細心の注意と集中力が求められる作業です。
この書類作成に時間がかかり、深夜まで残業することも、正直に申し上げて、決して珍しくはありません。この地道で正確な作業こそが、会社の信頼を支えているんですね。
20:00 明日の準備・ロープレ
明日訪問するお客様の情報を再確認したり、提案する物件の資料を準備したりします。そして、よりお客様にご満足いただける提案ができるように、先輩に相手役になってもらい、商談の練習(ロールプレイング)をすることも。
こうした、見えない場所での日々の積み重ねが、トップ営業マンへの道を創っていくんです。
21:00 退社
ようやく一日の業務が終わり、帰路につきます。でも、帰りの電車の中で、スマートフォンで不動産ニュースをチェックしたり、自己啓発の本を読んだり。オフの時間も、自己投資に充てている熱心な営業スタッフは、本当に多いんですよ。
【業務別】売買営業と賃貸営業、一日の流れのリアルな違い
「不動産営業」と一言で言っても、扱う商品やお客様が違えば、一日の時間の使い方も、大きく異なってきます。ここでは、「売買営業」と「賃貸営業」という、代表的な二つの職種について、それぞれの「ある一日」のスケジュールを、比較しながら見ていきましょう。
ケース1:売買営業マンのある一日(じっくり深く、一件と向き合う)
数千万円という高額な商品を扱う売買営業は、一件一件の取引に、じっくりと時間をかけて向き合うのが特徴です。一日のアポイントは1〜2件と少ないかもしれませんが、その一回あたりの深度が、非常に深いんです。
売買営業Aさん(30代・男性)のとある平日
- 9:00 出社・朝礼。担当エリアの新規売出物件と価格変更情報を徹底チェック。
- 10:00 司法書士と、担当案件の登記手続きについて電話で打ち合わせ。
- 11:00 午後の商談に備え、お客様の資産状況や家族構成を再確認し、提案資料の最終調整。
- 12:30 駅前の蕎麦屋で、急いで昼食。
- 14:00 お客様(50代・会社経営者)のご自宅を訪問。相続対策を兼ねた、資産の組み換えについてコンサルティング。
- 16:30 会社に戻り、商談内容を詳細に記録。お客様へのフォローメールを作成。
- 18:00 契約予定の物件に関する、重要事項説明書の作成に集中。条文の一つひとつを、六法全書と照らし合わせながら確認。
- 20:30 上司に書類のチェックを依頼し、フィードバックをもらう。
- 21:30 退社。
ケース2:賃貸営業マンのある一日(スピード勝負で、数をこなす)
一方、賃貸営業は、お客様の意思決定のスピードが速く、良い物件はすぐに他の人に決まってしまうため、とにかくスピード感が命です。一日に何組ものお客様を対応し、常に時間に追われながら、オフィスと物件の間を走り回ります。
賃貸営業Bさん(20代・女性)のとある土曜日(繁忙期)
- 9:00 出社。鳴り止まない問い合わせ電話に対応しながら、来店予約のお客様情報を確認。
- 10:00 1組目のお客様(学生さん)が来店。希望をヒアリングし、3件の物件をご案内。
- 12:30 2組目のお客様(新婚さん)をご案内中に、1組目のお客様から「決めます!」と入電。急いで申込手続きの段取りを組む。
- 14:00 コンビニのパンを頬張りながら、午後の内見で使う物件の鍵をピックアップ。
- 15:00 3組目のお客様(転勤の社会人)をご案内。
- 17:30 会社に戻り、山積みの入居申込書を処理。保証会社への連絡や、オーナー様への確認で、電話が手放せない。
- 19:00 今日決まった契約の、契約書作成。並行して、ポータルサイトの物件情報を更新。
- 21:00 ヘトヘトになりながらも、明日の来店準備を終え、退社。
いかがでしょうか。同じ不動産営業でも、求められる能力や、時間の使い方が全く違うことが、お分かりいただけたのではないでしょうか。

トップ営業と新人、一日の時間の使い方の決定的違い
最後に、同じ会社で同じ商品を扱っていても、なかなか成果の出ない「新人」と、常に高い成果を上げ続ける「トップ営業」とでは、一日の時間の使い方が、実は全く違う、というお話をしたいと思います。これは、あなたのキャリアを考える上で、とても大切な視点になりますよ。
新人の一日:とにかく行動量を稼ぐ「種まき」フェーズ
入社したての新人時代は、知識も経験も、そしてお客様もいません。ですから、一日の大半が、未来の成果に繋がる「種まき」の活動に費やされます。
とにかく行動量を増やすことが、何よりも優先されます。テレアポを100件かける、チラシを1,000枚配る、担当エリアの物件をすべて自分の足で見て回る。こうした、地道で、時には心が折れそうになるような活動を、ひたすら繰り返す毎日です。
また、先輩の商談に同行させてもらい、その技術を盗むのも、大切な仕事の一つ。夜は、覚えたての知識を定着させるために勉強したり、ロープレを繰り返したり。一日は、常にインプットとアウトプットで、パンパンの状態かもしれません。

トップ営業の一日:紹介と仕組みで動く「収穫」フェーズ
一方、トップ営業マンの一日は、驚くほどスマートに見えるかもしれません。彼らは、やみくもに行動量を追い求めることはしません。なぜなら、長年の努力で築き上げた「仕組み」が、お客様を連れてきてくれるからです。
朝から入っているアポイントの多くは、過去にお取引したお客様からの「ご紹介」です。わざわざ新規開拓をしなくても、お客様が新しいお客様を呼んでくれる、という好循環が生まれているんですね。
彼らは、自分の時間を、「自分にしかできない、最も付加価値の高い仕事」に集中させます。例えば、難しい交渉や、お客様へのコンサルティングです。契約書の作成などの事務作業は、アシスタントに任せていることも多いんですよ。
移動中などのスキマ時間も、スマートフォンで情報収集をしたり、重要顧客へこまめに連絡を入れたり、一瞬たりとも無駄にはしません。そして、夜は会食などで、新たな人脈を広げるための時間に使うことも。
新人の一日が「会社から与えられた時間を、どう使うか」であるのに対し、トップ営業の一日は、「自分自身で、主体的に時間をデザインしていく」という、全く異なる次元にあるんです。
不動産営業のリアルな一日がイメージできた理由のまとめ
不動産営業の「一日」という、小さな窓を通して、この仕事のリアルな姿を覗いてきました。最後に、この記事でお伝えしたかった大切なことを、もう一度、一緒に確認しておきましょう。
- 不動産営業の一日は、準備と実行、そして反省の繰り返し
華やかなイメージの裏側には、地道な情報収集、泥臭い新規開拓、そしてミスの許されない事務作業といった、膨大な努力が隠されています。 - 業務内容によって、時間の使い方は全く異なる
じっくり一件と向き合う「売買」と、スピード感を持って数をこなす「賃貸」。ご自身の性格や、どんな働き方がしたいかによって、選ぶべき道は変わってきます。 - 成長段階によっても、一日の質は変化する
最初は、がむしゃらに「種まき」をする毎日かもしれません。でも、その努力を続ければ、やがて、スマートに「収穫」できる、トップ営業への道が開けてくるんです。 - 「時間の使い方」を知ることが、後悔しない転職の第一歩
「自由そう」というイメージだけで判断するのではなく、そのリアルな時間の使い方を理解すること。それが、「こんなはずじゃなかった」という後悔を防ぐ、何よりの予防線になります。
不動産営業の一日は、決して楽なことばかりではありません。でも、その一つひとつの時間に、お客様への想いや、自身の成長への願いを込めることができたなら、それは、何物にも代えがたい、充実した一日になるはずです。
この記事が、あなたの抱く不動産業界へのイメージを、より解像度の高い、リアルなものに変えるお手伝いができたなら、これほど嬉しいことはありません。