タトゥーがあると不動産営業は無理?元営業が明かす採用のリアルと5つの道

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「ファッションとして、あるいは自分自身の想いを込めてタトゥーを入れたけれど、不動産営業への転職を考えた時、これが不利になってしまうんじゃないか…」。そんな風に、人知れず悩んでいらっしゃる方もいるかもしれません。華やかな不動産業界への憧れと、ご自身のアイデンティティとの間で、心が揺れ動きますよね。

こんにちは。私は以前、不動産会社で営業として働き、現在は広報としてたくさんの営業の方々のリアルな姿を見てきました。その経験から、この難しい問題についてお話しさせていただくと、結論から申し上げまして、決して簡単な道ではない、というのが正直なところです。ですが、可能性が完全にゼロというわけでもないんですよ。

この記事では、なぜ不動産業界でタトゥーが敬遠されがちなのか、その背景にある本質的な理由から、採用面接でのリアルな影響、そして、もしタトゥーがあってもこの業界でキャリアを築いていくための具体的な5つの道筋まで、一つひとつ丁寧に、そして誠実にお話ししていきたいと思います。

この記事でお伝えしたいこと

  • なぜ不動産業界でタトゥーが敬遠されるのか、その3つの本質的な理由
  • 採用面接でどう見られる?タトゥーが与えるリアルな影響
  • 【部位・大きさ別】採用における許容範囲の境界線はどこか
  • タトゥーがあっても不動産業界で働くための、5つの具体的なキャリアパス
  • 面接で伝えるべきか?カミングアウトの最適なタイミングと誠実な伝え方

なぜ不動産営業の世界ではタトゥーが敬遠されるのか?

まずはじめに、どうして不動産業界、特に営業職において、タトゥーが一般的に敬遠される傾向にあるのでしょうか。その理由を感情論ではなく、業界の構造から理解することで、ご自身の状況を客観的に見つめ、次の一手を考えるための土台ができます。私が思うに、その理由は大きく3つあるんです。

理由1:お客様からの「信頼」がすべての基礎だから

これが、最も本質的で、そして最も大きな理由です。不動産は、お客様にとって人生を左右するほどの、非常に高額な資産です。その購入や売却という重要な決断のパートナーとして、お客様は営業担当者に、専門知識やスキル以上に、人としての「信頼性」や「安心感」を何よりも求めていらっしゃいます。

残念ながら、今の日本社会においては、タトゥーに対して「反社会的な勢力」を連想したり、威圧感を覚えたりする方が、特に年配の世代を中心に、まだまだ少なくありません。たとえあなたに全くそのつもりがなくても、お客様の心の中に無意識の不安や警戒心を生んでしまう可能性がある。この事実は、冷静に受け止める必要があります。

不動産営業は「会社の顔」です。あなたの第一印象が、そのまま会社の信用問題として捉えられてしまう。だからこそ、会社としては、お客様に少しでも不安を与える可能性のある要素は、できる限り排除したい、と考えるのが自然な経営判断なんですね。

理由2:業界の「保守的な体質」と顧客層

不動産業界は、その歴史が古く、伝統や慣習を重んじる、比較的「保守的」な体質の業界です。特に、古くから続く大手不動産会社や、富裕層を主な顧客とする企業では、その傾向が顕著です。

企業のトップや経営層、そして大切なお客様である富裕層の方々の中には、タトゥーに対して厳しい見方をされる方が多いのが現実です。そうした文化の中で、タトゥーを入れている社員を営業の最前線に立たせることは、会社の品格やブランドイメージに関わる問題だと考えられてしまうのです。

実際に、多くの企業の就業規則では、服務規程の中で「入れ墨(タトゥー)の禁止」が明記されているケースも少なくありません。これは、個人のファッションの自由を否定するというよりは、会社の信用を守り、すべてのお客様に安心していただくためのリスク管理、という側面が強いんです。

理由3:第一印象で生まれる「見えないハンディキャップ」

人と人が初めて会った時、その印象は、話の内容よりも、見た目や表情、話し方といった非言語的な情報で、そのほとんどが決まってしまう、と言われています。これを「メラビアンの法則」と呼んだりもしますね。

不動産営業において、これは非常に重要です。なぜなら、お客様との信頼関係は、ゼロから一つひとつ積み上げていくものだからです。しかし、もしタトゥーが見えることで、お客様に少しでもネガティブな先入観を与えてしまったら…。あなたは、信頼関係をゼロからではなく、マイナスの地点からスタートしなければならない、という見えないハンディキャップを背負うことになってしまうんです。

あなたの素晴らしい人柄や、仕事への情熱を知っていただく前に、見た目で判断され、心を閉ざされてしまう可能性がある。この機会損失は、営業として働く上で、非常に大きな痛手となってしまうんですね。


採用への影響は?不動産営業の面接とタトゥーのリアル

では、こうした業界の事情を踏まえた上で、実際の採用選考の場では、タトゥーはどのように判断されるのでしょうか。ここでは、私が多くの人事担当者や経営者から聞いてきた、リアルな視点をお伝えします。

「完全に隠せるか」が最初の大きな分かれ道

採用担当者がまず気にするのは、たった一つのシンプルな問いです。それは、「お客様の目に、触れる可能性があるか、ないか」ということです。

スーツを着用した状態で、タトゥーが完全に見えなくなるかどうかが、最初の、そして最大の分かれ道になります。ここで言う「スーツ着用時」には、夏場のクールビズ(半袖シャツなど)も含まれます。この基準で考えると、部位によって、そのハードルは大きく変わってきます。

手や指、首筋、顔など、どんな服装をしても隠すことが不可能な部位にタトゥーがある場合、残念ながら、お客様と直接対面する営業職での採用は、極めて厳しいと言わざるを得ないのが現実です。これは、差別というよりは、業務適性上の判断と捉えられています。

【部位・範囲別】許容度の境界線はどこにある?

あくまで一般的な傾向としてですが、部位や範囲によって、採用の可能性がどう変わるのかを、表にまとめてみました。ご自身の状況と照らし合わせて、冷静に判断するための参考にしてくださいね。

採用の難易度タトゥーの部位敬遠される理由
極めて困難顔、首、手の甲、指衣服で隠すことが不可能であり、
常にお客様の目に触れてしまうため。
困難
(要相談・会社による)
腕、手首、足首、ふくらはぎ夏場のクールビズ(半袖シャツ)や、
ストッキングを履かないスタイルなどで
露出する可能性があるため。
可能性あり
(要相談・会社による)
背中、胸、お腹、肩、太もも通常のビジネスウェア着用時に、
完全に隠すことができるため。
ただし、会社の規則や文化によります。

大切なことなので繰り返しますが、これはあくまで一般的な目安です。「可能性あり」の部位であっても、就業規則で全面的に禁止している会社もあれば、事情を考慮してくれる会社もあります。最終的には、個別の企業の判断に委ねられる、ということになります。

面接でカミングアウトすべき?最適なタイミングと伝え方

衣服で隠せる部位にタトゥーがある場合、次に悩むのが「面接で正直に話すべきか」という点ですよね。これは非常に難しい判断です。

隠し通すリスク
「言わなければバレない」と考えて入社しても、会社の健康診断や、社員旅行、懇親会などで、意図せず同僚や上司の目に触れてしまう可能性があります。その時に「採用時に隠していた」という事実が発覚すると、信頼関係が大きく損なわれ、経歴詐称とまではいかなくとも、非常に気まずい状況になってしまいます。

誠実に伝えるという選択
不採用になるリスクを覚悟の上で、あえて面接で正直に伝える、という選択肢もあります。これは、あなたの「誠実さ」を示すことにもつながります。

もし伝えるのであれば、タイミングと伝え方が重要です。

  • タイミング:一次面接など、書類だけで判断される段階ではなく、あなたの人柄や仕事への意欲をある程度理解してもらえた後の、二次面接や最終面接などが望ましいでしょう。
  • 伝え方:事実を淡々と、そして誠実に伝えます。そして何より大切なのは、仕事への真摯な想いと、お客様に決して不安や不快感を与えないよう、細心の注意を払うという覚悟を、自分の言葉でしっかりと伝えることです。

【カミングアウトの伝え方・例文】
「本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。最後に一点、私の個人的なことで、お伝えしておかなければならないことがございます。実は、背中にタトゥーが入っております。ファッションとして若気の至りで入れたもので、現在は反省しております。もちろん、業務中は衣服で完全に隠れており、お客様の目に触れることは決してございません。御社の業務においては、身だしなみや清潔感が何よりも大切であると理解しておりますので、お客様に少しでもご不安を与えないよう、細心の注意を払って業務に邁進する覚悟です。」


タトゥーがあっても不動産業界で輝くための5つの道筋

さて、ここまで厳しい現実についてもお話ししてきましたが、ここからは、どうすればその壁を乗り越え、不動産業界でキャリアを築いていけるのか、という具体的な道筋についてお話しします。視点を変えれば、道は一つではないんですよ。

道筋1:お客様と直接会わない「バックオフィス職」を目指す

まず考えていただきたいのが、「不動産営業」という職種に固執せず、「不動産業界」という広いフィールドで働く、という視点です。不動産会社には、営業以外にもたくさんの大切なお仕事があります。

  • 一般事務・営業事務:物件情報のデータ入力、契約書類の作成補助、電話応対など。
  • 経理・総務・人事:会社の根幹を支える管理部門のお仕事。
  • 物件管理(プロパティマネジメント):入居者対応や建物のメンテナンスなど。メールや電話でのやりとりが中心の業務もあります。

こうしたお客様と直接顔を合わせる機会の少ないバックオフィス職であれば、タトゥーに対する許容度は、営業職に比べて格段に高くなります。宅建士の資格などがあれば、専門性を活かして、さらに活躍の場を広げることもできますよ。

道筋2:「ドレスコードが比較的自由」な会社を選ぶ

不動産業界と一括りに言っても、その文化は様々です。伝統的な大手企業だけでなく、より自由でリベラルな社風の会社も増えています。そうした会社を、戦略的に選ぶという方法です。

  • 不動産テック系のベンチャー企業:IT技術を駆使した新しい不動産サービスを展開している会社です。社風も若く、多様な価値観に寛容で、服装なども比較的自由な傾向があります。
  • リノベーション会社・デザイン事務所系:中古物件を再生・販売する会社や、デザイン性の高い物件を扱う会社などです。クリエイティブな業界に近いため、個人のスタイルに理解がある場合があります。
  • 一部の投資用不動産会社:成果主義が徹底されており、「結果さえ出せば個人のスタイルは問わない」という文化の会社も存在します。(ただし、営業スタイルがハードな場合も多いので、事前のリサーチは必須です。)

道筋3:「見せない」ことを徹底する覚悟と工夫

もし、タトゥーのある方が営業職として採用された場合、それは「お客様に絶対に見せない」という、暗黙の、あるいは明確な約束の上でのことです。その約束を、プロとして徹底的に守り抜く覚悟と工夫が必要になります。

  • 夏場でも長袖の着用を徹底する。
  • ファンデーションテープやサポーターなどで、物理的に完全に隠す。

こうした努力を「苦」と感じず、仕事の一部として当たり前にできるかどうかが問われます。また、お客様に不自然な印象を与えないよう、「少し肌が弱くて、紫外線対策で長袖を着ているんです」といった、自然な説明を用意しておくのも、一つの社会人としての配慮かもしれません。

道筋4:圧倒的な「スキル」と「実績」で認めさせる

これは、最も難易度の高い道ですが、不可能ではありません。それは、会社が「タトゥーというリスクを差し引いても、この人を採用したい」と思わせるほどの、圧倒的なスキルや実績を持つことです。

  • 他の業界で、誰にも真似できないような営業成績を収め、そのノウハウを武器に転職する。
  • 宅建士はもちろん、不動産鑑定士や土地家屋調査士、マンション管理士といった難関資格を取得し、専門家として替えのきかない存在になる。

タトゥーというハンディキャップを、余裕で上回るほどの「価値」を自分自身で作り出す。そんな気概のある方にとっては、挑戦しがいのある道かもしれません。

道筋5:将来的な「独立・起業」を視野に入れる

最後に、究極の選択肢として、いつか自分自身が経営者になる、という道があります。会社に属するのではなく、自分の会社を立ち上げるのです。

もちろん、これは簡単なことではありません。まずは不動産会社で、営業以外の職種でも構いませんので、実務経験を積み、スキルと知識、そして何より大切な人脈と資金を蓄える必要があります。時間はかかりますが、自分の城を築けば、そのルールはあなた自身が決めることができます。大きな夢ですが、一つの目標として、心に留めておくのも良いのではないでしょうか。

採用における個人の思想信条の自由については、厚生労働省も「公正な採用選考の基本」の中で、配慮を求めています。しかし、タトゥーの問題は、こうした理念と、企業の事業活動や顧客からの信頼という現実との間で、非常に難しい判断がなされているのが実情です。

まとめ:不動産営業とタトゥー、その現実と未来への歩み方

今回は、不動産営業とタトゥーという、非常にデリケートなテーマについてお話しさせていただきました。最後に、この記事の要点をまとめますね。

  • 不動産業界、特に営業職において、タトゥーは依然として敬遠される傾向にあります。その根底にあるのは、お客様からの「信頼」を何よりも重んじる業界の体質です。
  • 採用の可否を分ける最大のポイントは、「お客様の目に触れることなく、完全に隠せるかどうか」です。隠せない部位にある場合、顧客と対面する職種は極めて厳しいのが現実です。
  • タトゥーがあっても不動産業界で働く道はゼロではありません。「バックオフィス職を目指す」「ドレスコードが自由な会社を選ぶ」「スキルで圧倒する」など、5つの具体的な道筋があります。
  • どの道を選ぶにしても、現実を冷静に受け止め、その上で自分に何ができるのかを考え、誠実に行動していく姿勢が何よりも大切です。

タトゥーは、あなたの個性や人生の一部だと思います。それを否定するつもりは全くありません。ただ、不動産という、人の人生に深く関わる仕事を目指す上では、社会やお客様がそれをどう受け止めるか、という客観的な視点を持つことも、同じくらい大切になってきます。

簡単な道ではありませんが、この記事が、あなたがご自身のキャリアと真剣に向き合い、後悔のない選択をするための、一つの冷静な判断材料となれたなら、これほど嬉しいことはありません。