不動産営業はクビになる?安定性の真実と生き残るための5つの自己防衛術

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「不動産営業って、成果が出ないとすぐにクビにされちゃうんじゃないかな…」。華やかな世界の裏側で、そんな厳しいイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。厳しいノルマ、そして成果がすべての世界。もし結果を出せなかったら、自分の居場所はなくなってしまうのではないか、と不安になりますよね。

こんにちは。私は以前、大手不動産会社で営業として働き、現在は広報としてたくさんの営業の現場を取材しています。そんな私の経験からお話しさせていただくと、その「クビになる」というイメージは、少しだけ本当で、でもほとんどは誤解、ということができるんです。

この記事では、不動産営業における「クビ」の真実、そして日本の法律ではどうなっているのか、というお話から、どんな人が会社にいづらくなってしまうのか、そして何より、どうすれば長く安定して、やりがいを持って働き続けられるのか、そのための具体的な秘訣を丁寧にお伝えしていきますね。

この記事でお伝えしたいこと

  • 不動産営業で「クビ」と言われる状況の本当の意味
  • 知っておきたい!日本の法律における「解雇」のルール
  • 会社から「辞めてほしい」と思われてしまう人の5つの特徴
  • クビのリスクを回避し、安定したキャリアを築くための自己防衛術
  • 入社後に後悔しない!安定性を見極める会社選びのポイント

そもそも不動産営業は簡単に「クビ」になるのでしょうか?

まず、皆さんが一番気になっているであろう、この疑問からお話しさせてください。「成果が出ない営業マンは、即クビ」。これは、本当なのでしょうか。結論から申し上げますと、日本の法律では、会社が従業員をそう簡単に解雇することはできない、と定められているんです。

少し難しいお話になりますが、これを知っているだけで、心の持ちようが全く変わってきますから、ぜひ覚えておいてくださいね。

知っておきたい法律の壁:「解雇権濫用法理」

日本の「労働契約法」という法律の第16条には、こんなことが書かれています。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。(労働契約法 第十六条より)

…少し、言葉が難しいですよね。これを、とても簡単に言いますと、「誰が見ても納得できるような、よっぽどの理由がない限り、会社は一方的に社員をクビにはできませんよ」ということなんです。これを「解雇権濫用法理(かいこけんらんようほうり)」と言います。

ですから、例えば「今月、目標を達成できなかったから、明日から来なくていい」といったことは、法的には通用しないんですね。この大前提を知っておくことが、まず最初の安心材料になります。

「クビだ!」は本当の解雇ではないことが多い

では、ドラマなどでよく見る、上司が「お前なんてクビだ!」と怒鳴るシーン。あれはいったい何なのでしょうか。多くの場合、あれは法的な「解雇」を意味するものではありません。

あれは、強い言葉で叱責することで、プレッシャーをかけたり、奮起を促したりするための、いわば「喝」のようなものなんです。もちろん、決して褒められたやり方ではありませんが、その言葉を真に受けて「自分は解雇されたんだ」と落ち込む必要はない、ということは知っておいてくださいね。

ただし、注意が必要なのは「退職勧奨(たいしょくかんしょう)」です。これは、「会社を辞めてくれませんか?」と、会社側から退職をお願いされること。これは解雇とは違い、あくまで「お願い」なので、あなたが同意しない限り、退職する必要はありません。もしこのような状況になったら、一人で判断せず、信頼できる人や専門機関に相談することが大切です。

ただし「事実上のクビ」という厳しい現実も

法律で守られているとはいえ、残念ながら、居づらい雰囲気を作られて、自主的に辞めざるを得ない状況に追い込まれてしまう、というケースが全くないわけではありません。

  • 達成不可能なほどの高いノルマを設定される。
  • 他の社員の前で、人格を否定するような叱責を繰り返される。
  • 営業に必要な情報やサポートを、意図的に与えられない。

こうした状況は、いわば「事実上のクビ」とも言えるかもしれません。だからこそ、入社する前に、社員を大切にし、育てる文化のある会社かどうかをしっかりと見極めることが、何よりも重要になってくるんです。このお話は、後ほど詳しくさせてくださいね。


不動産営業で「クビ」のリスクが高まる人の5つの特徴

法律上、簡単にはクビにならない、というお話をしました。ですが、それでもやはり、会社側から「もう一緒に働くのは難しい」と思われてしまう人には、いくつかの共通した特徴があるんです。これは、不動産業界に限ったことではありませんが、特に注意が必要なポイントです。

これからお話しする5つの特徴は、解雇の「客観的に合理的な理由」と判断されかねない、危険なサインでもあります。ご自身のキャリアを守るためにも、ぜひ知っておいてください。

特徴1:法律違反や不正行為に手を染めてしまう

これは、最も厳しい処分である「懲戒解雇(ちょうかいかいこ)」の対象となる、絶対にしてはいけないことです。目先の契約や利益のために、一線を越えてしまう。その誘惑が、不動産業界には潜んでいることも事実です。

  • 宅地建物取引業法違反:物件のデメリットを故意に伝えない、契約を急がせるために嘘をつく(誇大広告)など。
  • 横領・背任:お客様から預かったお金を使い込む、会社の経費を不正に請求するなど。
  • 個人情報の不正利用:顧客情報を他の目的に利用したり、外部に漏らしたりする。

こうした行為は、お客様の信頼を裏切るだけでなく、会社の信用を根底から揺るがす重大な裏切り行為です。どんなに成績が優秀でも、一度でもこれに手を染めれば、会社にいることはできなくなります。

特徴2:社会人として当たり前の「勤務態度」が著しく悪い

営業成績以前に、社会人としての基本的なルールを守れない場合も、リスクが高まります。会社は、チームとして機能することで成り立っていますから、その輪を乱す行動は問題視されます。

  • 無断欠勤や、理由のない遅刻を繰り返す。
  • 上司からの正当な業務指示に、理由なく従わない。
  • 勤務時間中に、業務とは全く関係のないことをしている。

もちろん、一度や二度の失敗で即、解雇ということにはなりません。会社はまず、注意や指導を行います。それでも改善の姿勢が見られず、何度も同じことを繰り返した場合、「就業規則違反」として、厳しい処分の対象となり得るのです。

特徴3:改善努力をしない「著しい成績不振」

「成績が悪いとクビになる」というイメージは、この点から来ているのかもしれません。ですが、ここには大切な条件がつきます。

ただ「成績が悪い」だけでは、解雇の正当な理由にはなりにくいです。長期間にわたって、他の社員と比べてあまりにも成績が低く、さらに会社が研修や面談、配置転換といった改善のための機会を与えたにもかかわらず、本人の努力や改善が見られない場合、という厳しい条件が付きます。

つまり、会社側も努力を尽くした上で、それでもなお改善の見込みがない、と判断された場合に、初めて退職勧奨や解雇が検討される、ということなんです。大切なのは、思うように成果が出なくても、諦めずに学ぶ姿勢を見せ続けることなんですね。

特徴4:お客様や同僚との間で「深刻なトラブル」を起こす

不動産営業は、信頼関係で成り立つお仕事です。その信頼を自ら壊してしまうような行動は、致命的です。

  • お客様からのクレームが頻発する:高圧的な態度や、説明不足などが原因で、お客様とのトラブルが絶えない。
  • 社内でのハラスメント行為:セクハラやパワハラなど、他の社員が安心して働ける環境を破壊する行為。

こうしたトラブルは、会社の信用を失墜させ、組織の秩序を乱すと見なされます。特にハラスメントは、今、社会全体で非常に厳しく見られています。個人の成績が良くても、チームワークを乱す人材は、会社にとって大きなリスクとなってしまうのです。

特徴5:学ぶ姿勢がなく、自らの「成長を放棄」している

これは、直接的な解雇理由にはなりにくいかもしれませんが、退職勧奨の対象になりやすい、静かな危険信号です。

不動産業界は、法律や税制、市場のトレンドが目まぐるしく変わります。常に新しい知識を吸収し、自分をアップデートし続ける意欲が不可欠です。それなのに、

  • 会社の研修や勉強会に、積極的に参加しない。
  • 上司や先輩からのアドバイスに、素直に耳を傾けない。
  • うまくいかない原因を、周りの環境やお客様のせいにする。

こうした姿勢は、「成長の見込みがない」と判断されてしまいます。会社としても、将来性のない社員に、投資し続けることは難しいと考えるでしょう。自ら学ぶことをやめてしまった時が、営業としてのキャリアが止まってしまう時なのかもしれません。


クビを回避!不動産営業で長く安定して働くための5つの自己防衛術

さて、ここまで少し厳しいお話もしてきましたが、ここからは、どうすればそうしたリスクを回避し、不動産営業として長く、安定して輝き続けられるのか、という前向きなお話をさせてください。私がたくさんの営業の方々を見てきて、大切だと感じた「自己防衛術」を5つ、ご紹介しますね。

自己防衛術1:何があっても「誠実さ」を貫き通す

これが、すべての基本であり、最強の自己防衛術です。目先の契約欲しさに、少しぐらいなら…と魔が差してしまう瞬間が、あるかもしれません。でも、その小さな嘘やごまかしが、後々自分を苦しめることになります。

お客様にとっての良い情報も、悪い情報も、すべて正直にお伝えする。分からないことは、分かったふりをせず、きちんと調べてから回答する。この当たり前の誠実さを積み重ねることが、何物にも代えがたい「信頼」という財産になるんです。

そして、コンプライアンス、つまり法令遵守の意識を常に高く持つこと。宅地建物取引業法などのルールは、会社やお客様を守るためだけでなく、あなた自身をトラブルから守ってくれる、大切な盾でもあるんですよ。

自己防衛術2:資格取得で「替えのきかない人材」になる

会社から「この人には、ずっと会社にいてほしい」と思われる存在になること。これも、素晴らしい自己防衛術です。

そのための最も分かりやすい方法が、資格の取得です。特に「宅地建物取引士」の資格は、重要事項の説明という独占業務があるため、持っているだけで会社にとってのあなたの価値は格段に上がります。

さらに、

  • ファイナンシャルプランナー(FP):住宅ローンやライフプランニングの相談に乗れる。
  • マンション管理士:マンションの管理組合へのアドバイスなど、専門性を発揮できる。
  • 不動産コンサルティングマスター:より高度で専門的なコンサルティングが可能になる。

こうした資格で専門性を高めていけば、あなたはもはや「ただの営業」ではなく、お客様や会社にとって「なくてはならない専門家」になることができます。知識は、誰にも奪われない、あなただけの一生の武器になります。

自己防衛術3:自分の「努力のプロセス」を記録し、可視化する

思うように成果が出ず、苦しい時期は誰にでもあります。そんな時、上司から「一体、毎日何をしているんだ?」と問われたら、あなたはどう答えますか?

ここで大切になるのが、自分の行動をきちんと記録しておくことです。日報や活動報告書に、「今日は〇件のお客様に電話し、〇件訪問した」「〇〇という物件の調査に、これだけの時間をかけた」といった具体的なプロセスを、丁寧に記録しておくのです。

これは、ただの報告書ではありません。成果が出ていない時でも、「自分はこれだけの努力をしている」ということを客観的に示すための、大切な証拠になります。また、自分の行動を振り返ることで、改善点を見つけるきっかけにもなります。この地道な作業が、いざという時にあなたを守ってくれるんです。

自己防衛術4:孤立せず、相談できる「味方」を作る

仕事の悩みを、一人で抱え込んでしまうのが一番よくありません。特に、不動産営業は個人で動くことも多く、孤独を感じやすいお仕事でもあります。

だからこそ、意識してほしいのが、社内で良好な人間関係を築くことです。困った時にアドバイスをくれる上司、愚痴を言い合える同僚、成功事例を共有してくれる先輩。そんな「味方」の存在は、何よりも心強いものです。

分からないことは素直に「教えてください」と聞く。うまくいったら「〇〇さんのおかげです」と感謝を伝える。こうした日々のコミュニケーションが、あなたを孤立から守り、働きやすい環境を自ら作っていくことにつながります。

自己防衛術5:究極の秘訣は「育てる会社」を選ぶこと

これまで4つの自己防衛術をお話ししてきましたが、実は、これが最も重要で、根本的な解決策です。

社員を「コスト」や「使い捨ての駒」としか考えていない会社に入ってしまっては、どんなに努力しても、心がすり減ってしまいます。そうではなく、社員一人ひとりを「財産」と考え、じっくりと育てる文化のある会社を選ぶこと。これが、究極の自己防衛術なんです。

入社前に、こんな視点で会社を見てみてください。

  • 研修制度は充実しているか?:新人研修だけでなく、継続的なスキルアップの機会があるか。
  • 離職率は高すぎないか?:社員が定着しているのは、働きやすい証拠です。
  • 面接官は、あなたの話をしっかり聞いてくれたか?:面接官の態度は、その会社の社員への態度を映す鏡です。

自分に合った、安心して長く働ける会社と出会うこと。それが、あなたのキャリアを輝かせるための、一番の近道なんですよ。

まとめ:不動産営業でクビになるリスクと安定して働くための秘訣

最後に、この記事でお伝えしてきた大切なポイントをまとめますね。

  • 日本の法律上、「成果が出ない」という理由だけで、不動産営業が即座にクビになることはありません。法律が労働者を守ってくれています。
  • ただし、法律違反や不正行為、著しい勤務態度の不良などは、解雇の正当な理由となり得るので、絶対に避けなければなりません。
  • クビのリスクが高まるのは、「学ぶ姿勢を失い、成長を放棄してしまった人」や「周囲との信頼関係を自ら壊してしまう人」です。
  • 最大の自己防衛術は、「誠実さ」を貫き、資格取得などで「専門性」を高め、会社にとって「替えのきかない人材」になることです。
  • そして何より、社員を大切にする「育てる文化」のある会社を選ぶことが、長く安定して働き続けるための、最も重要な鍵となります。

「クビ」という言葉の響きは、とても強く、怖いものですよね。でも、その正体を知り、やるべきことをきちんとやっていれば、過度に恐れる必要は全くありません。むしろ、誠実な努力が正当に評価される、とてもやりがいのある世界です。

この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、不動産業界への前向きな一歩を踏み出すきっかけになれたら、こんなに嬉しいことはありません。