「不動産営業って、本当に稼げるの?」「トップセールスになったら、年収は一体いくらになるんだろう…」。そんな風に、不動産業界の華やかな収入面に、大きな夢と、少しの疑いを抱いている方も多いのではないでしょうか。20代で年収1,000万円、トッププレイヤーは3,000万円、5,000万円…。まるで夢のような話に、現実味がわかないのも無理はありません。
こんにちは。私は以前、大手不動産会社で営業として働き、現在は広報として、まさにそうした「トップセールス」と呼ばれる方々を、350人以上も取材してきました。その経験から、はっきりとお伝えできることがあります。その夢のような年収は、決して夢物語ではない、ということです。
この記事では、不動産営業のリアルな年収構造から、トップセールスの方々が、一体どれくらいの収入を得ているのか、そして何より、彼らがその他大勢の営業と一体何が違うのか、その思考法や習慣について、私が直接見聞きしてきた具体的なエピソードを交えながら、余すところなくお話ししていきますね。
この記事でお伝えしたいこと
- 不動産営業の給与の仕組み「インセンティブ」のすべて
- 【実例】トップセールスのリアルな年収と、その驚くべき稼ぎ方
- 年収300万円の営業と、年収3000万円のトップセールスの決定的な違い
- 誰でも真似できる!トップセールスに共通する7つの思考法と習慣
- あなたがトップセールスを目指すための、具体的な第一歩

なぜ不動産営業は稼げるの?年収を左右する「インセンティブ」の仕組み
トップセールスの驚くべき年収のお話をする前に、まず、どうして不動産営業は、これほど高収入を目指せるのか、その基本的な給与の仕組みについて、ご説明させてください。このカラクリを理解することが、夢への第一歩になります。
基本給+インセンティブ(歩合給)が給与の基本
不動産営業の給与は、多くの場合、二つの要素で構成されています。
- 基本給(固定給):毎月、必ず支払われる固定の給料です。これは、生活の基盤となる、安定した収入部分ですね。
- インセンティブ(歩合給):あなたの営業成績、つまり、契約した物件の売上や仲介手数料に応じて、基本給に上乗せして支払われる成功報酬です。
この「インセンティブ」こそが、不動産営業が高収入を実現できる、最大の理由なんです。青天井、とまでは言いませんが、あなたの努力と成果次第で、このインセンティブはどこまでも増えていく可能性があるんですよ。
【重要】インセンティブの「料率」が年収を大きく左右する!
では、インセンティブは、具体的にどう計算されるのでしょうか。ここで最も重要になるのが、「料率(りょうりつ)」という考え方です。
料率とは、あなたが会社にもたらした利益(仲介手数料など)のうち、何パーセントが、あなたのインセンティブとして支払われるか、という割合のことです。
この料率は、会社の方針や、扱う物件の種類によって、大きく異なります。一般的に、5%〜25%程度の範囲で設定されていることが多いようです。そして、この料率の違いが、年収に絶大なインパクトを与えるんです。
少し、具体的なシミュレーションをしてみましょう。
例1:売買仲介(手数料の10%) | 例2:投資用不動産(売上の2%) | |
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扱う物件 | 5,000万円の中古マンション | 3,000万円のワンルームマンション |
会社が得る利益 | 仲介手数料 約171万円 (売主・買主双方から) | 売上 3,000万円 (自社物件の場合) |
インセンティブ料率 | 利益の10% | 売上の2% |
1契約あたりの あなたのインセンティブ | 約17.1万円 | 60万円 |
いかがでしょうか。同じ「1件の契約」でも、扱う物件や会社のインセンティブ制度によって、あなたが手にする金額が、こんなにも違うんです。だからこそ、転職や就職の際には、このインセンティブ制度がどうなっているのかを、しっかりと確認することが非常に重要になるんですね。
【実録】不動産営業トップセールスのリアルな年収と生活
さて、いよいよ本題です。インセンティブの仕組みを踏まえた上で、トップセールスと呼ばれる方々は、実際にどれくらいの年収を稼いでいるのでしょうか。私がこれまで取材してきた中で、特に印象的だった実例を、いくつかご紹介しますね。
ケース1:28歳・売買仲介トップセールスAさんの場合
年収:約2,500万円
都心部のタワーマンションなどを専門に扱う、入社6年目のAさん。彼の強みは、お客様からの圧倒的な信頼感から生まれる「紹介」の多さです。彼が担当したお客様が、次々と新しいお客様を紹介してくださるため、自分から新規で営業をかける必要がほとんどないんだそうです。
「僕が売っているのは、物件じゃなくて、『安心』なんです」と彼は言います。お客様のどんな小さな不安にも、休日や深夜を問わず、誠実に応える。その積み重ねが、年収2,500万円という結果につながっているんですね。愛車は、高級外車のスポーツカー。でも、それを自慢するのではなく、「この車に乗ることで、お客様に『この人に任せれば、夢が叶うんだ』と思っていただける。これも、仕事の一部なんです」と語っていたのが印象的でした。
ケース2:35歳・投資用不動産トップセールスBさんの場合
年収:約5,000万円
新卒で投資用不動産会社に入社し、13年間、トップを走り続けてきたBさん。彼の年収は、私が聞いた中でもトップクラスでした。彼の営業スタイルは、とにかくストイック。毎朝誰よりも早く出社し、その日に電話をかける企業のリストを、業界新聞や経済誌を読み込みながら、すべて自分で作成していました。
「断られるのが、僕の仕事です」と、彼は笑います。「100件電話して、99件断られても、たった1件、僕の話に未来を感じてくれる人がいれば、それでいい」。その強靭なメンタルと、徹底した準備が、彼を年収5,000万円のステージへと押し上げたのです。彼は、稼いだお金で、自分自身も複数の不動産を所有する投資家でもありました。「自分で実践していないことを、お客様に勧めるなんて、失礼でしょう」と。その言葉の重みは、他の誰とも違っていました。
ケース3:42歳・用地仕入れトップセールスCさんの場合
年収:約3,000万円(+会社の業績による特別賞与)
Cさんの仕事は、マンションを建てるための土地を、地主さんから買い付ける「用地仕入れ」。表舞台には出ませんが、不動産事業の心臓部を担う、非常に重要なポジションです。彼の武器は、何年もかけて地主さんの心を開く、「人間力」としか言いようのないものです。
「土地は、地主さんにとって、ただの資産じゃない。家族の歴史そのものなんです」。彼は、契約の話をする前に、何ヶ月も、ただただ地主さんの元へ通い、世間話や、庭の手入れの手伝いを続けます。そして、地主さんから「あんたになら、この土地を任せてもいい」という言葉を引き出すのです。彼が一件、大きな土地を仕入れると、会社には何十億円という利益がもたらされます。その功績が、彼の年収に反映されているんですね。
彼らの話を聞いて、いかがでしたでしょうか。確かに、金額は夢のようですが、その裏側には、私たちには想像もできないほどの、地道な努力と、仕事への深い哲学がある、ということを感じていただけたのではないでしょうか。
年収300万円と3,000万円。トップセールスと凡人を分ける7つの習慣
では、年収300万円で伸び悩む営業と、年収3,000万円を稼ぎ出すトップセールスとでは、一体、何が、どこが違うのでしょうか。それは、才能や運といった、曖昧なものではありません。日々の仕事に対する、ほんの少しの、しかし決定的な「思考法」と「習慣」の違いなんです。ここでは、私が多くのトップセールスに共通して見出した、7つの法則をご紹介します。

法則1:彼らは「時間」を自分の給料で買っている
トップセールスは、例外なく「時は金なり」という言葉の意味を、骨の髄まで理解しています。彼らは、自分が本当に集中すべき「コア業務」以外のことには、徹底的にお金を使います。
- 移動は、電車ではなく、タクシーを使う。(移動中に電話をしたり、資料を読んだりするため)
- 面倒な事務作業は、アシスタントを雇って任せる。
- 家事は、家事代行サービスにアウトソーシングする。
「自分の時給はいくらか?」を常に意識し、その時給に見合わない作業は、お金を払ってでも人に任せる。そうやって捻出した時間を、お客様との面談や、自己投資といった、より生産性の高い活動に集中投下しているんです。
法則2:彼らは「物件」ではなく「未来」を売っている
普通の営業は、物件のスペック(広さ、駅からの距離、設備など)を説明します。しかし、トップセールスは、それをしません。彼らがお客様に語るのは、その家で送ることのできる「幸せな未来の物語」です。
「この広いリビングがあれば、お子さんのお友達をたくさん呼んで、誕生日パーティーが開けますね」「この書斎なら、リモートワークにも集中できて、ご自身の時間も大切にできますよ」。お客様が、その家での暮らしをありありと想像し、ワクワクするような未来を、一緒に描いてあげるのです。お客様は、家という「モノ」ではなく、その先にある「体験」にお金を払う、ということを彼らは知っています。
法則3:彼らは「即レス」を神のルールとしている
お客様からのメールや電話への対応スピード。これが、驚くほど速い。私が取材の依頼をした時も、数分で返信が来たのには驚きました。「なぜ、そんなに速いんですか?」と尋ねると、彼らは口を揃えてこう言います。「お客様の不安な時間を、1秒でも短くするのが、僕らの仕事ですから」と。
お客様が何かを問い合わせてくる時、そこには必ず、何らかの「不安」や「疑問」があります。その不安な気持ちに、誰よりも早く寄り添うこと。この小さな誠実さの積み重ねが、「この人なら、いつでも頼りになる」という、絶対的な信頼感に変わっていくのです。
法則4:彼らは自分自身に、最も厳しい「投資」をしている
トップセールスは、稼いだお金を、ただ浪費しません。彼らは、自分という商品価値をさらに高めるために、それを惜しみなく「自己投資」に使います。
- 外見への投資:ヨレヨレのスーツは着ません。信頼感を与えるために、体に合った上質なスーツや、きれいに磨かれた靴、品のある時計などを身につけます。
- 知識への投資:毎朝、複数の経済新聞に目を通し、業界の最新動向をインプットします。休日には、税務や資産運用に関するセミナーに参加し、常に知識をアップデートし続けています。
- 健康への投資:最高のパフォーマンスを維持するために、パーソナルジムに通ったり、栄養バランスの取れた食事を心がけたりと、体調管理を徹底しています。
法則5:彼らは「断られること」を恐れない
普通の営業は、お客様から断られることを恐れ、アプローチをためらいます。しかし、トップセールスは、断られることを「仕事の一部」であり、「貴重なデータ収集の機会」だと捉えています。
「なぜ、今回はご縁がなかったのか」「お客様が、本当に求めていたものは何だったのか」。一つひとつの「No」から、次につながる学びを得ようとします。彼らにとって、失敗は終わりではなく、成功へのプロセスの一部でしかないのです。このマインドセットの違いが、行動量の圧倒的な差となって表れます。
法則6:彼らは超一流の「聞き手」である
意外に思われるかもしれませんが、トップセールスは、実は「話し上手」である以上に、「聞き上手」です。彼らは、自分の話をする時間の2倍、3倍の時間を、お客様の話を聞くことに使います。
お客様の言葉の裏にある、本当の悩みや、本人さえ気づいていない潜在的な願望を、巧みな質問で引き出していく。そして、お客様がすべてを話し終えた後に、そのすべての課題を解決する、たった一つの最適な提案を、満を持して提示するのです。お客様に、「この人は、私のことを誰よりも理解してくれている」と感じていただく。これこそが、クロージングの極意なんですね。
法則7:彼らは「紹介」こそが最高の勲章だと知っている
トップセールスは、目先の契約を追いかけません。彼らが見据えているのは、そのお客様との、一生のお付き合いです。一人の顧客満足が、次の新しいお客様との出会いを生む、「紹介の連鎖」を創り出すことを、常に考えています。
だから、たとえ契約にならなくても、お客様のために全力を尽くす。その誠実な姿勢が、お客様の心を打ち、「友人にも、あなたを紹介したい」という、最高の言葉につながるのです。お客様からの「紹介」は、彼らにとって、どんなインセンティブよりも価値のある、最高の勲章なんですよ。
まとめ:不動産営業トップセールスの年収は、お客様からの「ありがとう」の総量
今回は、不動産営業トップセールスの、夢のある年収と、その裏側にある、彼らの哲学についてお話しさせていただきました。最後に、この記事のポイントをまとめますね。
- 不動産営業の高年収は、成果に応じて支払われる「インセンティブ(歩合給)」によってもたらされます。
- トップセールスの中には、年収3,000万円、5,000万円を超えるプレイヤーも実在しますが、その裏には、並々ならぬ努力と、仕事への深い哲学があります。
- 年収を分けるのは才能ではなく、「時間の使い方」「提案の仕方」「レスポンスの速さ」「自己投資」「失敗への捉え方」「聞く力」「紹介を生む力」といった、日々の思考法と習慣の違いです。
- 彼らにとっての年収とは、単なるお金の額ではありません。それは、どれだけ多くのお客様に満足していただき、どれだけたくさんの「ありがとう」をいただいたか、その総量を可視化したものなのです。
トップセールスへの道は、決して平坦ではありません。しかし、彼らは決して、特別な人間ではないのです。今日お話しした7つの法則は、意識さえすれば、誰にでも、明日から真似できることばかりです。一つひとつ、地道に実践していくこと。それが、あなたが夢を掴むための、最も確実で、そして唯一の道だと、私は信じています。
この記事が、あなたの心に火をつけ、不動産営業という素晴らしい世界で、大きな成功を収めるための一助となれたなら、これほど嬉しいことはありません。